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視点 オピニオン21
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両毛漁業協同組合長  中島 淳志 (桐生市川内町)


【略歴】奥羽大文学部英語英文学科卒。アパレル関係の仕事の傍ら、漁協に従事。2010年、組合長に就任。釣り専門誌に執筆し、フライフィッシング講師も務める。


機能していない魚道



◎川を知り適切な管理を


 前回は魚道の重要性について述べたが、「機能していない魚道」とはどういうものか? 長年にわたり改修を訴えていた取水堰(ぜき)の旧魚道を例に述べたいと思う。

 この魚道は、本流に注ぐ支流の最下流部にある取水堰といった点で、支流への魚の遡上(そじょう)がほとんど見込まれない深刻さがあった。建設当時の河川形状や水量の変化を考慮しても、取水堰にあとから飾りで取って付けられたような設計など、多くの疑問が残る魚道だった。

 魚道の上流端は堰の天端に位置し、堰全体を覆うように水が流れなければ魚道に水が流れない形状で、増水時にやっと流れるといった状態であった。しかし堰全体を覆ってしまうような増水時には、当然魚道の周辺からも魚が降下してしまい河川に戻れなくなってしまうものもいる。魚道内を降下したとしても、通路の側壁が低く老朽化による破損も多いため、魚が魚道の外へと吐き出て、コンクリートの堤防のような所に取り残されていたこともあった。

 これから挙げる問題点は他の魚道でも非常に多く見受けられる。まず、魚道下流端の河床低下によって起こる遡上障害。この魚道の場合は水面から50センチ以上の垂直な段差となり、助走となる水量(水深)があれば、魚種によっては遡上できるかもしれないが、平水時、その下流端部分は人間のふくらはぎ程度の水深といった状態であった。そして、魚道上流端に隣接した取水口による遡上魚の迷入。この魚道では遡上ができないため遡上魚の迷入はないが、一年中ほとんど水が流れていないため、降下しようとする魚が取水口に迷入してしまうだろうと考えられる。また、取水堰ではよくあることで、大量の水を取水口へ送りたいがため、本川の水量が減り、かなりの水流により魚が取水口に引き込まれてしまうといったことも多い。

 今回例に挙げた堰においても一時存在していたが、自然の驚異には脱帽するばかりで、堰の脇の土砂崩れなどで自然に魚道ができ、生命がつながれている所もある。しかし、そういう部分はすぐに改修工事が入り、自然にできた魚道はなくなってしまう。

 魚道を機能させるということは、立派な魚道があるだけでは意味がない。自然の恩恵を受けているわれわれの義務として、その川を知ることから始まり、適切な管理があってこそ機能するものなのである。

 昨年、この取水堰に新たな魚道が完成した。長年の訴えに市民の方々や各行政機関が耳を傾けてくださり、実現させてくれた。この魚道によって河川の本来あるべき姿の魚の天然遡上などもこれから多く見られることであろう。そしてわれわれはこの魚道によってより良い環境が築けるよう尽力する。また、この場をお借りして、関係した皆さまに感謝の意を表します。





(上毛新聞 2013年3月29日掲載)