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両毛漁業協同組合長  中島 淳志 (桐生市川内町)


【略歴】奥羽大文学部英語英文学科卒。アパレル関係の仕事の傍ら、漁協に従事。2010年、組合長に就任。釣り専門誌 に執筆し、フライフィッシング講師も務める。


河川敷のかかし



◎カワウ食害周知させる


 一般的にかかしというと、田畑に立てられたかかしを思い浮かべるであろう。桐生市にお住まいの方や、桐生市内によく釣りに来られる方はご存じと思うが、両毛漁協では2008年より、7月~8月に渡良瀬川と桐生川の河川敷に一部分、かかしを設置してカワウからの食害防止対策を行っている。

 カワウは潜水能力にたけた魚食性の鳥で、一日に体重の3分の1~4分の1に相当する餌を食べると考えられている。群馬県内の漁場において、カワウによる魚の食害はすでに1985年ごろから懸念され始め、年々個体数は増加し、問題は深刻さを増してきたのである。両毛漁協管内においても、2000年には渡良瀬川の高津戸ダム周辺に300~600羽を超えるコロニーが確認され、当時県内最大級と言われていた。

 群馬県の各漁協と行政機関は水産研究と遊漁に関して先進的で、野生動物やカワウに関する専門家の協力も得ながらいろいろな対策を駆使してきた。だが、カワウは移動範囲が広く、これといった完全なる防除対策が得られず、地道な追い払いが長年主体となっている。当組合でも現在、一定期間早朝と夕方に追い払いをしているが、カワウの追い払いを徹底して行うとなると、相当な労力と経費が掛かる。このため、大半はやる気のある組合員らのボランティア精神によって、ロケット花火やおもちゃのピストルなどで驚かすといった地道な追い払いと飛来調査を続けているのが現状である。

 この状況に関して思うのは、経済的被害が膨大な割に問題視されづらいというところに問題があり、漁場で起こっている出来事ゆえに一般に分かりにくいことと、カワウ食害による被害額全てを根拠を持って算出するのは難しいというところがやり切れない部分である。

 そんな苦しい状況下で、かかし設置の試みは、カワウの防除対策はもちろんだが、食害問題をより多くの方に周知していただくことも大事であろうと思い、始めたのである。かかしは単に立てただけではその効果は発揮されない。追い払い時に目立つ服を着てカワウの嫌がる行為をすると、同じ服装のかかしを警戒するようになるといった、カワウの学習能力を利用することで効果を発揮する。周知していただきたいという目的においては、予想以上の結果を得ることができた。

 市街地に川が流れている土地柄のおかげか、河川環境への関心が高い方が多く、川を訪れる方が手を叩いてカワウを追い払ってくれるなど協力してくださり、とても感謝している。漁協だけでなく、この問題を真剣に考えてくれる市民の協力によって、新しい進展につなげていくことができていると実感している。






(上毛新聞 2013年7月14日掲載)