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視点 オピニオン21
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両毛漁業協同組合長  中島 淳志(桐生市川内町)


【略歴】奥羽大文学部英語英文学科卒。アパレル関係の仕事の傍ら、漁協に従事。2010年、組合長に就任。釣り専門誌に執筆し、フライフィッシング講師も務める。


釣りの素晴らしさ



◎自然の尊さ、厳しさ知る


 毎年夏になると、子どもを対象とした魚釣り教室のイベントが盛んに行われる。私にとって、釣りや魚を通して市民の方々とふれ合うことのできる大切なイベントであり、あらためて釣りの素晴らしさを実感できるイベントであると毎回思う。

 最近、そのイベントの中で「とても楽しかったのでまたやりたいのですが、また川に来ても良いのですか?」と質問されることが多いのに驚いている。河川敷の公園へはよく行くが、川に近づいたのは初めてだという方が多く、「危険だから川に近づかないように」などと常々言われていることから、実際に川で遊んで良いのか、どこで遊べるのかがよく分からないということだそうだ。当然「もちろんです」と答えてはいるが、はたして安易に「もちろん」などと言っても大丈夫なのだろうかと不安も抱いている。その不安は結局、「川は危険だけど大丈夫ですか? 分かっていますか?」ということに行きつくのである。

 私は幼少のころから釣りが好きで、当たり前のように川で遊んでいた。当然危険なことや、ちょっとしたけがをすることも何度となくあったが、だからといって川から遠ざかることもなく、釣りをする中でそうした経験を学習しながら対処法を自然に身につけてきたものだ。確かに川には危険なことがたくさんある。しかし、何が危険なのかを知ることにより危険ではなくなり、自ら注意することによってほとんどは回避できることなのである。

 実際に川の中を歩き、魚が釣れるかどうか分からない状況で試行錯誤していると、日常生活にはない緊張感、危機感といったものを実感できる。その体感は釣りをする上で極めて重要なものである。魚を釣り上げるという目的に向けてのさまざまなプロセスで、五感や直感といった「感」を鋭く働かせ、知恵や知識が試され、養われていくのではないかと思う。そして、その中で自然の厳しさや尊さを知るのでないだろうか。

 冒頭にも述べたが、「あらためて釣りの素晴らしさを実感できる」と思うのは、釣り教室などに参加された方々は、大人も子どもも皆、夢中になって真剣なまなざしで魚釣りをしているからである。釣りの良いところは、子どもから高齢者まで年齢・性別を問わず、一人でも、家族や友人と一緒でも、誰にでも同じフィールドで自然の生き物と対面し、ふれ合うことのできる遊びというところにある。だからこそ、より多くの方々に自然河川での釣りを体験していただきたいと思っており、そのフィールドを絶やさないよう努力しているのだ。そして特に次世代を担う子どもたちには、魚釣りを体験した中で分かったことや感じたことを目いっぱい吸収し、自分なりの豊かな想像力を発揮していってもらいたいと思うのである。






(上毛新聞 2013年9月5日掲載)