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群馬県のニュース

創作過程と精神 追う 「月に吠える」刊行100年記念展 

更新日時:2017年8月1日(火) AM 06:00
 前橋市出身の詩人、萩原朔太郎(1886~1942年)の第一詩集「月にえる」の刊行100年を記念した特別企画展が群馬県の前橋文学館で開かれている。初版本や直筆原稿、書簡など約150点を展示。「日本近代詩史の一つの事件」とも称される詩集が生まれる過程を追うとともに、同詩集が今日、どう捉えられているかに焦点を当てている。

■内務省の検閲
 口語自由詩を確立した朔太郎の第一歩となる同詩集は17(大正6)年2月刊行で、当初から反響を呼んだ。収めたのは14年9月から約2年半に発表した55編。初版は内務省の検閲で性的表現に問題があるとして「愛憐」「恋を恋する人」の2編が削除させられた。

 企画展は削除に関するエピソードとともに、朔太郎が同市の歌人、小見可憐に贈った無削除本(県立神奈川近代文学館蔵)や2編の直筆原稿を紹介。カバー表紙の「夜の花」を描いた田中恭吉や、装丁を手掛けた恩地孝四郎を取り上げ、「詩画集」としての側面も伝えている。

 「此頃僕の内部で何かえたいのわからぬ奇異な光が受胎して居る。そいつがだんだんあばれ出す」(「ノート一」、14年9月ごろ)。後に「浄罪詩篇ノオト」と名付けられるノートや書簡には病気や疾患、懺悔、光といった言葉や、思いを寄せた女性を巡る出来事が記され、詩作していた頃の精神状態がうかがえる。

 「詩は神秘でも象徴でも鬼でもない。詩はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである」。朔太郎は序文にこう記した。

■映像、美術で表現
 刊行から1世紀をへた詩を現代人はどう捉えるのか。同館が県内外のアーティストに依頼した映像や美術作品も並ぶ。同市出身の美術作家、林麻依子さんが手掛けたオブジェの猫は、ぴんと張った尻尾の先に浮かぶ三日月を連想させる。

 アニメーション作家、白石慶子さんの作品「蛙の死」は萩原朔美館長の朗読で、セピア色の画面に子どもの手が次々と現れる。折笠良さんの作品「地面の底の病気の顔」はにじんだような文字が生き物のように揺らぎ、宇宙へのつながりを感じさせる。

 萩原館長が同市主催の「第2回まえばしCMフェス」の審査員を務めた縁で、同フェス入賞者4組も実写の映像作品を出品。「さびしい人格」「天景」など朔太郎の世界観をそれぞれの感性で捉え、2~3分半程度で表現した。

 展示室へは、同詩集の表紙を描いた大きな扉を開けて入る仕掛け。天井からは「悲しい月夜」「竹」など詩集のページを印刷した布が下がる。学芸員の津島千絵さんは「詩集の中に入るように朔太郎の作品世界に触れてほしい」と話している。

◎書き下ろし33点展示…清家雪子さん「月に吠えらんねえ」原画展
 特別企画展に関連し、萩原朔太郎や北原白秋らの作品に着想を得た清家雪子さんの漫画「月に吠えらんねえ」の原画展が、前橋文学館で開かれている。第1話のほか、「群馬ネタ」で清家さんが書き下ろした作品など33点を紹介している。

 漫画は「朔くん」「白さん」らが登場。詩集や全集など膨大な参考文献を基に、清家さんが創り出した「しかく(詩歌句)街」の物語の一端に触れることができる。書き下ろしは土屋文明や高橋元吉、大手拓次といった群馬県の歌人や詩人から発想したキャラクター、こんにゃくや焼きまんじゅうにまつわるエピソードが盛り込まれている。

 特別企画展と原画展は10月9日まで。水曜休館。特別企画展は常設展と併せて一般300円。原画展は無料。

 8月20日には5月の「朔太郎忌」で上演して好評だった朗読劇「『月に吠える』を声で立ちあがらせる」を再演。午後1時と3時半の2回で、入場無料。定員は各回80人(先着順)。問い合わせは同館(電話027-235-8011)へ。(天笠美由紀)

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

「月に吠える」の初版本や詩集の世界観を紹介している特別企画展

 

書き下ろしの「群馬ネタ」も紹介している清家雪子さんの「月に吠えらんねえ」の原画展

 

初版で削除された「愛憐」の直筆原稿