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群馬県のニュース

《プレゼンター》「秘密のケンミンSHOW」プロデューサー清水紀枝さん 

更新日時:2017年8月7日(月) AM 06:00
 ヒト、モノ、カネを東京に吸い寄せられまいと、全国各地で地域おこしやPRの競争が繰り広げられている。地方の“素の顔”にスポットを当て、地域の魅力発信にこだわるテレビ番組が「秘密のケンミンSHOW」だ。グルメや特産品、習慣、人情―。ご当地ならではのユニークさを比べたり競わせるバラエティーだが、制作には「もっと地元を愛して」との熱い願いが込められている。

◎コメントの味「西の大阪、東の群馬」
 番組制作会社、ハウフルス(東京都港区)のプロデューサーとして「秘密のケンミンSHOW」(日本テレビ系)を制作している。地域で定着していても地域外では全く通じない言葉や食文化がある。その他大勢の「何それ?」という突っ込みと、当事者の「えっ、全国共通じゃないの?」という驚きや戸惑い。この相乗効果が一番の狙い所だ。

 古里や住んでいる地域への誇りは誰もが抱く。だから、世間と異なることに気付いて「恥ずかしい」と思う半面、「だけど、すごいでしょう」と誇らしくもある。その素直な気持ちを大切にしてほしい。情報化した小さな島国なのに、地域色が豊かな文化や食べ物がそれぞれに定着し続けているのは本当に面白い。

 *伊勢崎市出身。番組では群馬県を茨城、栃木などの近隣県と絡めて取り上げる企画も目立つ。

 全国放送だから極端に偏るわけにはいかないが、群馬の登場頻度はかなり高いと思う。私自身、地元の群馬が大好きなので週2回の企画会議で「群馬なら…」とつい言ってしまうことも多い。「群馬はなぜか面白い」というのはスタッフの一致した意見だ。

 幾つもある理由の中で、取材で重視なパートを占める街頭インタビューでの好印象が大きい。地域性がにじんで味のあるコメントを引き出しやすいことから、スタッフは「西の大阪、東の群馬」と横綱級に位置付けているほど。気取らず、人が良く、熱い地元愛を持つ―という人懐こい県民性だからこそ、視聴者も取材陣も引きつけられる。

◆時代は今◆ 地方移住に関心高まる
 東京から近い群馬は、取材側にとって移動の負担が小さくありがたい。これは観光や移住を考える場合も有利になるだろう

 逆に、東京まで新幹線でわずか1時間の距離にすぎないのに、群馬の地域性の強さはなぜなのだろう。方言はわりと強いし、人間関係も濃密だ。けれども県民は「東京とそんなに変わんない」と思って疑わない。県外の人はそこに面白さを感じている。

 大学進学や就職で県外に住んで初めて群馬の良さが分かった。東京のドライな人間関係を少しリセットしたくて、2カ月に1度は必ず帰省する。澄んだ空気を吸い込み、おいしい野菜やおっきりこみを味わい、幼少期からなじんだ赤城山の遠景を眺めると、「帰ってきた」と実感できる。自分自身を含め、こうした愛すべき群馬の姿を知る一人一人が「いい所だよ」とどんどん発信していくことが大切ではないか。

  *番組は10月に10周年を迎える。地方の魅力を掘り起こす映像と、それを見て各地の出身タレントがスタジオで掛け合うスタイルは一貫している。

◆こう戦おう◆ 一人一人が対外発信を
 番組を作り続ける中で、地方への関心は確実に高まっていると実感する。先日放送した「田舎スペシャル」という特集は予想を上回る高視聴率だった。日常生活でも話題が古里のお国自慢になると、東京生まれの友人らは「古里としての田舎がほしくなる」と口々に言う。毎日の生活の中では気付きにくいが、地方での暮らしは、それ自体に大きな魅力がある。地方移住への関心も高まっていくのではないか。

 群馬は首都圏に近く、産業が充実し気候も穏やか。つまり、豊かなのだ。県民の人の良さにつながるのだが、見方を変えれば、アピールが苦手な県民性にも通じる。意識的にずうずうしく、「これ見てくんない」「うまいんべ」と対外的に発信できれば、知名度やブランド力が埋没するはずはない。

 いつか取り上げたいと温めているのは「『かかあ天下』を誤解しないで」というテーマ。言葉の響きから「群馬は恐妻家が多い」と誤解されがち。でも実は養蚕や機織りといった産業を女性が担ったという、女性がしっかりとしていて輝いてきた証し。そういう先駆的な土地柄なんだと誇りを持って伝えたい。

  *番組では各地域の「意外な一面」も取り上げる。長寿番組で切り口を工夫する必要に迫られているためだが、地域が新たな魅力を発掘したり、生み出す上で参考になる。

◆経験は語る◆ 変化富んだ四季に魅力
 「群馬と言えば、温泉」のように多くの人が連想して分かりやすい、いわゆる「ベタな魅力」は最も重要な要素。だけど、「意外にも」という、いい意味で期待を裏切られると興味をそそられる。

 米どころの新潟県は日本酒のイメージが強いが、最近はワイン生産が盛んになってきている。海が近く、寒暖の差がある県土はコメだけではなく、ブドウ栽培にも適しているそうだ。生産量は全国上位で品質も上がっているのに驚き、「そうきたか、新潟」と心が弾んだ。新しい名物を自ら生み出そうとする取り組みは頼もしい。

 群馬は四季がすごくはっきりしていることが大きな特徴だ。真夏の酷暑、花や紅葉で彩られて味覚も楽しめる春と秋、雪景色の冬、強烈な空っ風もある。しかも、平野部と中山間地では全く土地の表情が異なる。変化に富んだ四季を味わってもらう年間を通じた観光プロジェクトなどができれば大きな可能性がある。

 これからも群馬を愛する一人として、知恵を絞りながら全国の人に魅力を伝えていきたい。「群馬には何もねえ」などと照れずに、県民一人一人が素直に熱く地元愛を発信してほしいと願っている。(聞き手・石倉雅人、撮影・外処郷平)

 しみず・のりえ 伊勢崎市出身。伊勢崎女子高―関東学院大卒。1996年にハウフルス入社。2007年の放送開始時から「秘密のケンミンSHOW」プロデューサー。44歳。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

「秘密のケンミンSHOW」のセットに立つ清水さん=東京メディアシティ

 

女性がしっかりとしていて輝いてきた「かかあ天下」を伝えていきたいと話す清水さん

 

「秘密のケンミンSHOW」の群馬県出身の出演者席に座る清水さん=東京メディアシティ