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群馬県のニュース

《ニュース最前線》広がる子ども食堂 健全育成の拠点に 

更新日時:2017年9月17日(日) AM 06:00
 貧困や育児放棄といった困難を抱える家庭などの子どもの力になろうと、無料や安い値段で温かい食事を提供する「子ども食堂」が県内で急増している。厚生労働省の2016年国民生活基礎調査で、「子どもの貧困率」は15年時点で7人に1人(13.9%)と先進国の中で高めの水準にあるのに加え、手軽に事業化できることから、団体や自治体が相次ぎ参入している。

 食堂は利用する子どもにとっては心休まる場所だ。しかし、運営にはボランティアや食材の確保、食中毒、アレルギーへの警戒が必要となる。継続的に運営する資金や拠点、活動の周知も大きな課題だ。

 多くの子どもや保護者が利用できるよう、県内で活動の広がりが期待されるが、現状では地域格差もある。将来にわたって子どもの健全育成の役割を担えるか。子ども食堂の現状と課題を探った。

◎安心の食卓 届けたい 継続運営が課題 行政と連携模索
 「電磁調理器はお湯がすぐには沸かず、料理も煮込めなかった」「当日使う野菜や調味料はどこに保管したらいいのか」
 今月4日、沼田市の上之町会館で「まちの子ども食堂・沼田」の会員10人が8月下旬に開いた試食会を踏まえ、意見を出し合った。30日に子ども食堂を開業する予定で、参加者の集め方や食物アレルギー対策、県への補助金申請についても話し合われた。

■補助金が頼り
 ドメスティック・バイオレンス(DV)被害者の支援に取り組むNPO法人結いの家(同市)の尾崎多美子さん(58)らが中心となって2月に団体を発足した。会議を10回開き、食材の確保や食器の準備などを進めてきた。尾崎さんは「DVと虐待、貧困はつながっている。活動を通じて手助けが必要な人を見つけ出したい」と話す。

 ただ、子ども食堂を継続的に運営するには、拠点の確保や参加者の募集など課題がある。尾崎さんは「所得などを理由に対象世帯を限定するのは難しい。今は一つのブームだが、継続していくためには行政を巻き込むことが必要」と指摘する。

 意欲のある人が動きだす一方、既に活動を始めた人たちも課題に悩まされている。前橋市で10日に開かれた、県内の子ども食堂の関係者らが意見を交わすイベントでは、「チラシを配ってもらおうと市役所を訪れたが断られた」「活動場所を増やしたいが、保健所の許可が出ない」といった不満が噴出した。

 高崎市で活動する「高崎子ども食堂」など5団体が活動を報告。多くの団体が寄付金や行政の補助金を活動費用に充て、チラシで参加者を募集している状況を説明した。ボランティアの確保や教育行政との連携、保険加入などが話題に上った。

 一般参加者を交えた議論では、ひとり親や生活保護世帯に活動を知ってもらうために市町村教委や学校にチラシ配布を依頼できるかがテーマになり、「立ち上げ当初は団体の信頼性が乏しい。自力でやるしかない」「個人情報や公平性の観点から難しい」といった意見が出た。

■保護者も対象
 子ども食堂は地域住民の居場所としての機能も期待されている。参加した自治体職員の男性は「子ども食堂に関する問い合わせを受ける。行政がどこまでできるかを考え、一歩を踏み出したい」と話していた。

 行政が運営する子ども食堂も民営と同様に利用者が伸び悩んでいる。太田市は小中学生にカレーを100円で提供する「おおたんこども食堂」を児童館で土曜日に開いているが、利用者は10~20人程度で、当初見込みの30~40人に届かない状況だ。

 貧困世帯が対象とのイメージが広がっていることがその原因とみられ、高柳雄次・児童施設課長(53)は「子どもが気軽に食事できる環境を整えるという意図が保護者にしっかり伝わっていない」と分析する。利用者増に向け、10月からは保護者も対象に加える方針だ。

 県内各地で広がる子ども食堂をブームで終わらせず、地域に不可欠な存在にするには、より多くの人が寄付やボランティア、食堂の利用など、できる範囲で活動に参画することが重要だ。

「異変気付く役割が大切」 高崎健康福祉大の石坂公俊講師(社会福祉学)の話
 子どもの欠食などがクローズアップされたことで「子ども食堂」の活動は広がっているが、食中毒などトラブルが発生すれば、ブームが収束する可能性がある。

 まずは活動を長く続けることが重要だ。貧困そのものを解消することは難しいが、異変に気付くセンサー機能が働き、つらい状況で過ごしている子どもを発見しやすくなる。民生委員やスクールソーシャルワーカーら専門家と情報交換できると機能が高まるだろう。

 首長や自治体の考え方が異なり、地域で活動の濃淡が出ている。貧困の子どもがいることは確かで、所得の再分配を強化することも考えたい。

 財源や場所、人材の確保といった問題もあるが、大切なのはブームで終わらせないことだ。子どもの貧困は親の貧困でもある。対象を子どもに限定せず、地域のお年寄りも含めた居場所づくりを目指すのも良いのではないか。

《記者の視点》見えにくい貧困
 無料学習塾や食料を無償提供するフードバンクなど、厳しい状況の子どもや家庭を支えようとする動きが広がっている。格差をこれ以上拡大させまいと考え、行動する人が増えているのだろう。

 スーパーやコンビニに所狭しと商品が陳列されて一部が廃棄される現状や、誰もが当たり前のようにスマートフォンを使いこなす状況からは貧困はないように思えるが、実態が見えにくくなっているだけにすぎない。

 子ども食堂の運営に携わっているのは、熱意や善意から主体的に活動している人ばかりだ。見えにくくなった貧困を、意思を持って見つめ、現状を改善しようとしている。

 地域の中の人間関係が薄れたと言われて久しい。子ども食堂という新しい支援の在り方が、この状況を少しでも良い方向に変えていけるよう、一市民として関わっていきたい。(報道部 毒島正幸)

 《子ども食堂》 経済的な理由で十分な食事を取れなかったり、1人で食事を済ます子どもに無料、もしくは低額で食事を提供する取り組み。2012年ごろから首都圏を中心に続々とオープンし、現在は全国で500カ所以上に上るとされる。県内では13年ごろから活動が活発化。本年度は少なくとも11市町村で実施、もしくは実施が予定されている。

  ◎群馬県内の主な子ども食堂
 ▽まえばし子ども食堂(前橋市上泉町)
 ▽集まれ前橋スポット(前橋市文京町)
 ▽高崎子ども食堂(高崎市井野町)
 ▽まんまる食事会(高崎市新町)
 ▽あいおい子ども食堂(桐生市相生町)
 ▽おおたんこども食堂(太田市児童館)
 ▽青少年育成サポート(太田市飯塚町)
 ▽まちの子ども食堂・沼田(沼田市上之町)
 ▽あかるい未来ネット(館林市西公民館)
 ▽しぶかわこども食堂(渋川市)
 ▽介護情報館(富岡市一ノ宮)
 ▽ひだまり子ども食堂(安中市松井田町)
 ▽みどりこども食堂ふぅ(みどり市笠懸町)
 ▽おいしいまごころネット(大泉町公民館)

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

おおたんこども食堂は10月から保護者を対象に加え、周知を図る

 

前橋市で10日に開かれた「広がれこども食堂の輪全国ツアー」。運営者らが子ども食堂の在り方を巡って意見を交わした