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群馬県のニュース

《ニュース最前線》ウエルカムGUNMA 増える訪日客 

更新日時:2017年7月18日(火) AM 06:00
 訪日外国人旅行者が増加傾向にある。東日本大震災の起きた2011年に落ち込んだものの、その後は5年連続で前年を上回っており、16年には過去最高の2403万9000人(日本政府観光局発表)に達した。

 人口減少が加速する状況下で、国内需要に大きな伸びは見込めない。その分、訪日外国人誘客への期待は大きい。東京や京都、大阪を巡るいわゆる「ゴールデンルート」を軸に、訪日客の呼び込みが進められている。

 まだ少ないとはいえ、温泉や自然を目当てに群馬を訪れる外国人も増えつつある。訪日客をさらに取り込むためにも、受け入れ態勢の充実が今後の課題となる。外国人を雇用したり、宗教に配慮したサービスを提案したり。県内各地で模索が始まっている。

■「世界でもトップ」
 「景色はとってもゴージャス。遊べるメニューがたくさんあり、ここに来られてラッキーだった」。みなかみ町で6月末、ラフティングを体験した英国マンチェスターのピーター・ブラウンさん(31)とレベッカ・ブラウンさん(31)は興奮した面持ちで話した。

 2人は結婚したばかり。新婚旅行先にフィリピンと日本を選び、東京や富士山、大阪、京都を巡る「ゴールデンルート」を観光した後に訪れたのが、みなかみ町だった。地名も知らなかったが、旅行サイトの口コミを参考に決めた。ところが「来てみたら最高。1泊では物足りずもっといたい」と大満足の様子だった。

 ブラウンさん夫妻が参加したのは、キャニオンズ(同町湯檜曽)が主催するツアー。社長のマイク・ハリスさん(44)はニュージーランド出身。この町の自然に魅了され、水や雪を素材にさまざまな企画を提供している。

 同社の夏場のツアー参加者の2割は外国人。欧米や豪州などアドベンチャーツーリズムを好む英語圏の人々を中心に、ほぼ毎日予約が入り、最近はアジアからも増えてきた。ハリスさんは「ここの自然は世界でもトップレベル。日本人にもまだまだ知られていないが、その素晴らしさを発信していきたい」と話す。

■「20万人」前倒しへ
 訪日外国人客は年々増え続け、2016年は国内全体で前年比21.8%増の2403万9000人と過去最多を更新した。その流れは群馬も同じで、観光庁によると、従業員10人以上の旅館・ホテルの延べ宿泊者数は32.5%増の19万7000人だった。「19年に20万人」の県目標を前倒しで達成する勢いだ。外国人客への観光関係者の期待は大きい。

 キャニオンズが拠点を置くみなかみ町の16年度の外国人の延べ宿泊者数は2万5000人。台湾・台南市と友好協定を結んで職員を派遣するなど町と関係の深い台湾の観光客が3割強を占める。今後は東南アジアやオセアニアからも誘客を図り、22年度に8万人と3倍以上に増やす目標だ。

 日本を代表する草津温泉(草津町)は16年の延べ宿泊者数が台湾や中国を中心に4万3500人と、前年から1万2000人近く増えた。湯畑周辺の街並みを整備し、季節ごとに動画を配信するなど町を挙げた取り組みが奏功している。

■外国人スタッフ
 インバウンドに力を入れる草津ナウリゾートホテルは中国や台湾、ネパールなど外国人スタッフを約10人配置した。中国・福建省出身の鄧凌鋒さん(26)は「現地の言葉で案内すると喜ばれる。日本のホスピタリティーをもっと学びたい」と意欲的だ。営業担当者は月1回のペースでアジアの国々へ出向き、PR活動を展開している。

 イスラム教徒(ムスリム)の需要を狙った動きも出始めた。伊香保温泉(渋川市)のホテル松本楼は、イスラム教で禁忌とされる豚肉やアルコール類を使わないハラル認証の食材を使用したメニューを考案し、一般客用も含め、みりんや砂糖などハラル対応の調味料を導入した。今月中旬に第1弾の団体客を受け入れた。

 若おかみの松本由起さん(47)は「ムスリムに特化したのではなく、『食のバリアフリー』を意識した。新たな取り組みで新たな客層を開拓したい」と説明する。

 伊香保温泉旅館協同組合は10、11の両日、実践的なおもてなしの英会話を学ぶ勉強会を初めて開いた。インバウンド対策は県内各地で広まりつつある。

 高崎経済大地域政策学部の大野正人教授(64)は、「ゴールデンルートや周遊観光ルートが確立されている地域に比べ、県内のインバウンドはまだ少ない」と指摘。今は団体客が中心だが、今後は個人客が増えると見通しを示し、「温泉の特徴や文化を発信し、日帰りや1泊でもよいので、足を運んでもらうのが重要」と強調する。

◎北関東は栃木ややリード 宿泊者数
 北関東3県の2016年の外国人の延べ宿泊者数(従業員10人以上の施設)は群馬19万7000人、栃木21万4000人、茨城19万7000人とほぼ同規模だった。

 群馬県は自治体間の関係が深い台湾からの観光客がほぼ半数を占める。本年度はマレーシアと豪州を新たなターゲットに据え、5月にはシドニーで開かれた雪がテーマの旅行博に初出展した。雪はアジア各国の需要も高く、スキー場へのアクセスと雪質の良さを効果的にPRする方針だ。

 栃木県はあしかがフラワーパークのフジが米CNNテレビの「世界の夢の旅行先」に選ばれ、米国からの旅行者が台湾、中国に次いで多い。ただ、「欧米の旅行客は日帰りが多く、宿泊してもらうための工夫が必要」(観光交流課)という。茨城県は成田空港(千葉県)からの近さを生かし、乗り継ぎの数時間の間に観光してもらう企画を試験的に実施。本年度は個人客向けの街歩きガイドを作製するという。

《記者の視点》県民全体で対応
 小さい頃に異国の人と触れ合ったのは、ALT(外国語指導助手)の先生ぐらい。今や外国人が当たり前にいて、観光地では中国語や英語の会話を耳にする。

 取材した草津ナウリゾートホテルの尾山啓さん(48)は飛騨高山(岐阜県)のホテルで働いていた。小京都と呼ばれ、世界遺産の白川郷に近く、宿泊客の8割は外国人だったという。「ゴールデンルート以外を訪れる外国人は必ず増える」と見通す。

 過去最多を更新したといっても、群馬を訪れる外国人はまだまだ少ない。お金を使ってもらい、さらにリピーターになってもらうために取り組むべきことは少なくない。

 かつて旅行したトルコで忘れられないのは、道を丁寧に教えてくれ、ドーナツを振る舞ってくれたおじさんだ。旅館や店だけでなく県民の「OMOTENASHI」がリピーターをつくるきっかけになるはずだ。(報道部 高瀬直)

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

利根川でラフティングを体験するピーター・ブラウンさん、レベッカさん夫妻(手前)

 

外国人スタッフをそろえインバウンドに力を入れる草津ナウリゾートホテル