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群馬県のニュース

御巣鷹の麓 鎮魂の灯籠流し 日航ジャンボ機墜落 

更新日時:2017年8月12日(土) AM 06:00
 520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故から12日で32年を迎えるのを前に、墜落現場「御巣鷹の尾根」の麓を流れる群馬県上野村の神流川で11日夕、遺族らが慰霊の灯籠流しを行った。雨の降る中、「空の安全を祈ります」「安らかに」などとそれぞれの思いを書き込んだ大小300個の灯籠を流し、犠牲者の冥福を祈った。

 全員で黙とうした後、村長として初めて参加した黒沢八郎村長があいさつし、「あの悲しい事故から32年。あの日の記憶が薄まることはない。慰霊の園の理事長という重責を果たしていきたい」と述べた。

 来賓のあいさつで、慰霊登山を続ける作家の柳田邦男さん(81)=東京都杉並区=は遺族らを前に「事故で奪われた多くの命は消滅したわけではない。支え合い、助け合って明日も生きていこうと語りかけてくれている」と話した。

 遺族らでつくる「8・12連絡会」や県内のボランティア団体でつくる実行委員会が主催。JR福知山線脱線事故や東日本大震災、御嶽山噴火など大きな事故や災害の犠牲者遺族も参加し、悲しみを分かち合った。高崎アコーディオンサークルとアマービレ・オカリナ会が慰霊の音色を奏でた。

 12日は朝から遺族らが慰霊登山し、夕方に慰霊の園で追悼慰霊式が営まれる。

◎惨事 風化させない 事故後の世代「語り継ぐ」
 日航ジャンボ機墜落事故で亡くなった520人をしのぶ灯籠流しがあった11日、会場となった上野村の神流川を訪れた遺族らは故人に思いを巡らせ、あらためて公共交通の安全を願った。日中には事故後に生まれた若い世代が慰霊登山をし、事故を後世に語り継ぐことを誓った。

 「夫婦2人で暮らしてきた。寂しい限りだった」。田淵親吾さん(88)=兵庫県西宮市=は、陽子さん=当時(24)=と満さん=同(19)、純子さん=同(14)=の娘3人を失った。「年を取り現地に来るのは大変だが、風化させたくない」。その一心で毎年足を運ぶ。

 事故から32年となり、遺族は事故を伝え、安全を広く訴えたいという思いを強くしている。弟の健君=同(9)=を亡くした美谷島真さん(45)=東京都大田区=は「誰もが事故の被害者や遺族になる可能性がある。空の安全や被害者支援は誰もが無関係ではないと呼び掛けたい」と力を込めた。

 真さんの母、邦子さん(70)=同=は「8・12連絡会」事務局長として尽力してきた。連絡会との交流が縁で、他の事故や災害の遺族も訪れるようになった。真さんは「家族を失い初めてその悲しみを知ったが、遺族であれば思いは同じ。何も言わずとも分かりあえると思う」と語った。

 父の孝之さん=同(29)=を亡くした小沢秀明さん(31)=兵庫県明石市=は「高齢のため来たくても来られない人もいる。自分たち若い世代が積極的に事故について発信していきたい」と話した。

 遺族や地元住民の他にも、事故を思い続ける人がいる。宝塚歌劇団出身の女優、北原遥子さん(本名・吉田由美子さん)=同(24)=に憧れ、宝塚に入団したという奥田美香さん(47)=同県宝塚市=は娘の瞳子さん(16)らと訪れた。

 北原さんのことを聞いて育った瞳子さんは「内面も美しい人だと聞いている。会いたかった。事故を知らない友達は多いが、話せば真剣に聞いてくれる。これからも伝えていきたい」。大粒の涙を流す姿に、そばにいた美香さんも涙した。

◎大学生ら慰霊、清掃
 日航機墜落事故後に生まれた若い世代が「空の安全」を語り継ごうとしている。事故現場の「御巣鷹の尾根」には11日、大学生らが慰霊登山をしたり、登山道の清掃をしたりする姿があった。

 藤岡青年会議所(塚本浩史理事長)が企画した慰霊登山には、群馬医療福祉大の学生と会議所メンバーら28人が参加し、頂上付近の「昇魂之碑」で手を合わせた。誕生日が8月12日という同大1年の丸山莉帆さん(19)は「いつか何かをしたいと思っていた。二度と事故が起こらないで」と願った。同じ1年の篠原聡さん(18)は「自分たちが主体となって事故を子どもに伝えていきたい」と話した。

 航空業界を目指す東洋大の学生7人は多くの遺族らが登山する12日を前に、登山道のベンチや手すりを磨いた。同大3年の小島紫月さん(21)は「事故に直接関わっていない自分たちは山に入れさせていただき、掃除をさせてもらっているという気持ち」と話した。12日は慰霊登山の遺族らに冷茶を配布する。

 一方、11日夕にあった灯籠流しの手伝いには、遺族と交流してきた人たちが加わった。会場で十数年前から盆花の飾り付けをしている中村香代子さん(66)=前橋市=は今年、520個の折り紙の花も飾った。「事故で亡くなった人に空の上で元気でいてと伝えたい」と力を込めた。

 事故当時、遺族らの身の回りの世話をした主婦らでつくる「ふじおか・おすたかふれあいの会」の坂上シゲヨ会長(85)は遺族らに渡すおにぎりや菓子を用意し、「体力が続けば来年も頑張りたい」と話した。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

犠牲者の冥福と空の安全を祈り灯籠を流す人たち=上野村

 

灯籠流しの会場で、黙とうする参加者=11日午後6時半ごろ

 

手すりを磨く東洋大の学生=11日午後0時半