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視点オピニオン21

出願人住所情報 地域の産業動態を把握

イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎
 
 今回は、特許情報を使った分析のうち、出願人住所情報の活用を紹介する。

 特許出願を行う際に、出願人(主に企業)は、必ずその住所を記載する。そのため、この住所情報をもとに、都道府県別の特許出願状況を整理することで、地域ごとの産業動態をひもとくのに有益な情報となりうる。

 例えば、直近の3年間(特許情報は、1年半の未公開期間があるため、2013~15年、以後同)のデータによれば、日本特許庁への出願件数の多い都道府県は順に、東京都、大阪府、愛知県であった。

 一極集中がときに問題視されることもある東京の人口は、日本の10.6%(15年国勢調査)を占めるが、特許出願件数においては、なんと48.8%という、圧倒的な占有率である。日本の大企業、特に製造業の本社が、いかに東京に集まっているかが分かるだろう。

 ただし、出願人住所は、本社住所とする場合が多いが、そうでない場合もあり、運用は各社によって異なる。

 一方で、特許出願件数そのものは多くないが、人口の割に高い比率で出願をしている都道府県もあるのではないか。

 それを確認するために、人口1000人あたりで、年間に何件の特許出願があるかを確認した。すると、この観点からも、大都市圏が優位な結果となった。トップ3は、既出の3都府県だったのである。やはり、発明には、ヒト、モノ、カネが多く必要であるため、地方は不利なのであろうか。

 ただ、4位以下をみると順に京都府(人口13位)、神奈川県(人口2位)、山梨県(人口41位)、愛媛県(人口28位)、静岡県(人口10位)となっており、大都市圏ばかりというわけでもないことが分かる。なお、京都府は京セラ、神奈川県は富士通、山梨県はファナック、愛媛県は井関農機、静岡県はスズキがそれぞれの件数首位の出願人である。

 ちなみに群馬県は、人口では19位、人口1000人あたりの特許出願件数では21位と、あまり目立たない結果となった。特許出願件数は、隣県の栃木県に僅差で負けており、関東では最下位だった。ただし、人口1000人あたりの特許出願件数では、埼玉県、千葉県にも勝る結果となっている。

 なお、群馬県を出願人住所とするのは、出願件数順に、ソフィア(本社・桐生市境野町)、ミツバ(本社・桐生市広沢町)、ナカヨ(本社・前橋市総社町)、サンデンホールディングス(本社・伊勢崎市寿町)、群馬大(本部・前橋市荒牧町)であった。

 日本の特許出願件数はおおむね減少傾向だが、群馬県では15年に増加に転じた。これは関東で群馬県だけである。件数が増えればいいというものではないが、これが群馬県の産業発展の兆しになることを期待したいものである。



イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎 神奈川県川崎市

 【略歴】前橋市出身。中央大卒。特許事務所でマーケティング重視の特許情報分析を手がけ、2014年に会社を設立した。AIPE認定シニア知的財産アナリスト。

2017/07/16掲載
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