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視点オピニオン21

共同出願人情報 パートナー戦略に効果

イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎
 
 今回は、特許情報を使った分析のうち、共同出願人情報の活用を紹介する。

 日本の製造業は、かつて自社独自の研究開発に強いこだわりをもつ、いわゆる自前主義文化が色濃かったと言われている。このことが、社内の開発体制の強固な地盤を築き、企業の力の源泉となっていたのはまぎれもない事実であろう。

 しかし、近年においては、IoT(モノのインターネット)に代表されるように、さまざまな技術が複雑に絡み合った製品・サービスを提供していかないと勝ち残れない時代を迎えつつある。

 そこで、多くの大企業では、どの企業とパートナーシップを結ぶかという点に関心が高まっている。また、中小企業においてもパートナー戦略は生存に直結する必須の検討事項である。中小企業が大企業と組むというときは、多くの場合、売り先という意味合いをもつことから、それは、パートナー戦略であり、かつ、売り先候補の選定であるともいえる。

 このように、パートナー戦略は、企業の規模を問わず、今後ますます重要となっていくと考えられる。

 では、自社のパートナー戦略は、どのように検討を進めればよいだろうか。

 そのためには、まず、どの企業とどの企業がパートナーシップを結んでいるかという、現状を知ることである。しかし、代表的な技術分野は、本・雑誌・新聞などを当たればおのずと分かるが、参入者の少ない新しい領域などでは、なかなか難しいものである。

 そこで注目されるのが、特許情報における共同出願人の情報だ。

 特許出願は、一社単独で行われるものもあるが、複数社が共同して行われるものもある。これを共同出願という。

 共同出願を行うまでに至るには、共同出願人の間において、共同開発契約の締結があるなど、強固なパートナーシップを前提としている場合が多い。そのため、どの企業とどの企業が共同出願を行っているのかを分析することで、企業同士の親密度や企業の戦略をひもとくことが可能となるのである。

 例えば、リチウムイオン電池の正極材分野について見ると、同分野材料メーカーの住友金属鉱山は、トヨタ自動車との共同出願が多い。また、日亜化学工業は、近年、ホンダとの共同出願が始まっている。そして、日本化学工業は、SUBARU(スバル)との共同出願が継続している。これらの間には、パートナーシップが存在すると予想される。

 このような情報があれば、他の材料メーカーとしては、他の自動車メーカーとのパートナーシップを模索するのか、右記材料メーカーと戦って新パートナーとして名乗りを上げるのか、それとも他用途展開を図るのかなど、選択肢が見えてくるのである。



イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎 神奈川県川崎市

 【略歴】前橋市出身。中央大卒。特許事務所でマーケティング重視の特許情報分析を手がけ、2014年に会社を設立した。AIPE認定シニア知的財産アナリスト。

2017/05/24掲載
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