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視点オピニオン21

「グーグル先生」 ネット外にも答えある

甘楽町地域おこし協力隊 浅井広大
 
 突然ですが「グーグル先生」という言葉を聞いたことはありますか。インターネットの検索エンジン、グーグルで分からないことを検索すれば、大抵の疑問が解決することからついた敬称です。この言葉を耳にするようになったのはここ数年のことのように感じますが、今では私の友人も分からないことがあると「グーグル先生に聞いてみよう」とスマホを取りだすので、広く人口に膾炙(かいしゃ)している印象があります。

 こうしたなか「ネットで調べれば、たいていの情報や知識は手に入る」と口にする人にも時折出会います。私も日々、インターネットの恩恵にあずかっている身であり、彼らの話を「まあ、そうだよな」と聞くのですが、どこか違和感を覚えてしまいます。

 違和感の正体は、詰まるところ「インターネットだけでは得られない情報や知識がある」という自らの確信めいたものなのですが、それは私が青年海外協力隊として赴任したネパールと現在住んでいる甘楽町、二つの地域との関わりのなかで抱いたものです。

 ネパールで感じたのは、情報や知識が人・場所と結びついていることでした。インターネットが手近にないネパールでは、知らないことは人に尋ねたり、特定の場所に行かなくてはいけません。最初は言葉の理解もおぼつかなかったので、単語一つの意味を知るのに、近所の何人もの人を尋ね歩くこともありました。面倒で、非効率的に思うかもしれませんが、良かったこともありました。得るのに苦労した分、得られた情報や知識は忘れにくく、また予期せぬ副産物として質問した事柄に関連する周辺知識を手に入れることもできたのです。直接コミュニケーションをとることで良好な人間関係を築け、それが活動に生かされることも多々ありました。

 甘楽町に来てからも、私が今取り組んでいる養蚕や日本酒造りに関する大事な知識は、常にその世界で経験を積んできた人とともにあり、生身の体験を通して得なければならないものでした。

 確かにインターネットや検索エンジンは便利で、たくさんの新しい世界へと私たちを誘ってくれるとても素晴らしいツールです。しかし、「デジタル健忘症」(デジタル機器に記憶する役割を譲り渡すことによって自身の記憶力が低下する現象)やインターネット上にすべて答えがあるかのように錯覚する人を生んでしまうなど、負の側面も見逃せません。

 「この花が咲いたら田植えの時季なんだ」。ネパールで村のおじさんが教えてくれたのは、その地域固有の生きた知識でした。インターネット上に載っていない大事な知識があること、ネット環境にアクセスできなくても、立派な経験知を持つ人がたくさんいることを忘れてはいけないのではないでしょうか。



甘楽町地域おこし協力隊 浅井広大 甘楽町小幡

 【略歴】静岡県生まれ。大学卒業後、2013年1月から2年間、青年海外協力隊員としてネパールで活動。帰国後、甘楽町で国際交流に関わり、16年4月から現職。

2017/07/10掲載
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