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視点オピニオン21

チャンスを生かす道標 回転寿司理論のすすめ

プロダクトデザイナー、テシマデザインスタジオ代表 手島彰
 
 筆者は、今年でデザイン事務所開業10年を迎えることができました。地方拠点の工業デザイナーとして、海外のデザイン展などの出展経験もなく、知名度もない状態からスタートし、こうして続けてこれたのも、ひとえにさまざまな人との出会いのおかげと感謝しています。出会いがあり、チャンスを得て、結果を出す。このサイクルを生むことが独立開業後のまず一歩であり、それを維持し続けることが難しい所でもあります。

 ここ数年専門学校で講師もしていることもあり、学生との雑談の中で、「どうしたらデザインの仕事の依頼がくるのですか」と質問されたことから、学生にも伝わりやすい例え話を考えてみました。それが「チャンスをつかむための『回転寿司(すし)理論』」です。

 「私にはチャンスがない」「影響を受ける出会いがない」という人に限って、出無精であったり、没頭する趣味がなかったりと、チャンス以前に人との接点そのものが少ないケースがほとんどです。

 実際には、チャンスは誰にも平等にやって来ます。そのチャンスが目の間にあることに気付くか気付かないかの違いと思っています。

 例えば、「良いデザインの仕事をしたい」を、「おいしいお寿司を食べたい」に置き換えて考えてみることにします。まずはともかく、お寿司屋さんに入らなければなりません。おいしいと評判のお店なら、なおさら良いでしょう。

 そして、席に座って何を食べたいか考えなければなりません。漠然としていたら、お皿が目の前をただ通り過ぎるだけです。ぼーっとしている間に、好きなネタや、お店のお勧めのネタが通り過ぎてしまっているかもしれません。

 食べたいネタが具体的にあって、そのネタが3皿続いて近づいて来るのが見えました。その際に、ネタの色味や脂の乗り具合や表面の乾きなどを見て、知識や経験により、瞬間的に判断して皿を選びます。

 つまり「何かを得たい」と思ったら、その「何か」に関わる場所やその業界の有名な人の話を聞きに行く、直接会いに行くなど具体的にアクションを起こすことが重要です。

 そして、漠然と考えるよりも、自分のやりたいジャンルを具体的に思い描くことも大切です。それに関する情報が目の前の新聞やテレビで流れていても、その業界の有名な企業が近くにあっても、気付かずに過ごしてしまいます。

 影響を受ける出会い、接点が出来たその瞬間に交わす会話のやりとりは、日頃の知識や経験の積み重ねによる集大成です。そのためにも、自分の得意分野や興味への日頃の情報収集、勉強は欠かせません。新鮮なネタ、もといせっかくのチャンスが目の前を通り過ぎていかないためにも。



プロダクトデザイナー、テシマデザインスタジオ代表 手島彰 前橋市下佐鳥町

 【略歴】筑波大卒。富士重工業で初代インプレッサのデザインや事務用品のプラスで家具の企画開発を担当。2007年独立。グッドデザイン未来づくりデザイン賞受賞。

2017/07/03掲載