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視点オピニオン21

発明者分析より 成長企業に人材あり

イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎
 
 今回より、ビジネスにおいて特許分析が力を発揮する具体例を紹介する。まず紹介するのは、発明者分析である。発明者とは、技術を発明した人のことである。一般的には、企業で研究開発に携わるエンジニアがそれに該当する。

 そして、その発明者が何らかの発明をし、特許出願をする際には、誰がその技術の発明者なのか、出願書類に明記する必要がある。そのため、特許情報のビッグデータ解析を行えば、誰が、どの企業に所属し、いつ、どんな技術を開発したかがわかる。

 この発明者分析により、ある企業の技術キーパーソンを特定できる。そして、そのキーパーソンが最近注力している技術がわかる。これを積み上げることで、競合企業が、どの分野の技術開発に最近力を入れているか、客観的に把握することができるのだ。

 さらに、今ではほとんどの業界で、終身雇用制は過去のものとなりつつあるが、エンジニアもその例外ではなく、その人材流動を、発明者分析で把握することができる。

 発明者分析を用いて人材流動を調べた例としては、小生が行った、「日本人技術者流出の実態 最大の転職先はサムスン(日経ビジネス2013年7月8日号)」がある。この調査では、かつて日本企業に所属した多くの日本人エンジニアが海を渡り、海外企業の発展に寄与してきた実態を明らかにした。

 一方、そんな日本企業に厳しい時流の中、家電業界に新規参入し、エンジニアを積極的に中途採用する国内企業もある。アイリスオーヤマ(本社・仙台市)である。

 同社は、プラスチック収納や園芸商品などを中心に展開し、右肩上がりの成長を続けている。同社ホームページによれば、メーカー機能と問屋機能をあわせ持つため、生活者ニーズを迅速に製品開発に生かせるのだという。

 でも、実際はどうなのか。そこで今回、同社では、どの程度中途採用のエンジニアが活躍しているのかを、発明者分析を使って調査した。

 すると、やはり同社では、近年、家電分野の特許出願を著しく増やしていた。そして、その発明者を分析をすると、半数以上が、他社からの転職組と推測された。出身企業は、東芝、三洋電機、ソニーなどそうそうたる顔ぶれであった。また、そのほとんどが、2009年以降から発明者として関与している。このことから、このころより中途採用を本格化したと考えられる。確かに、転職組が活躍している実態が確認された。

 このように、成長企業の裏に人材がある。しかし、人材を生かせない企業も多い。その差は、一つは戦略であろう。情報に関わる者としては、有効な戦略を支える意味ある情報提供をしたいものである。

 今回の分析データ詳細は、知的財産アナリスト、武藤謙次郎のブログに掲載する。



イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎 神奈川県川崎市

 【略歴】前橋市出身。中央大卒。特許事務所でマーケティング重視の特許情報分析を手がけ、2014年に会社を設立した。AIPE認定シニア知的財産アナリスト。

2017/02/12掲載
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