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三山春秋

2017/09/08【三山春秋】 榛名山麓の榛東村や吉岡町の観光農園はブドウ狩りの真っ盛り。日差しを浴びて輝く甘い…

 
 ▼榛名山麓の榛東村や吉岡町の観光農園はブドウ狩りの真っ盛り。日差しを浴びて輝く甘い果実を大勢の行楽客が楽しむ。今は平和でのどかな表情をみせるブドウ園地帯だが、榛東村の農家は戦中戦後の荒波に揺れた

 ▼村には20世紀初めから旧陸軍の演習場があり、日中戦争が激化して日米開戦が迫った1941年、拡張のため周辺の農地 百数十ヘクタールが買収された。経緯を刻んだ石碑に「農民の生命線である農地を涙をんで國家こっかの要請に応えて手離てばなした」とある

 ▼戦後も農地は農家の手に戻らなかった。米軍が接収して激しい砲撃訓練が繰り返され、ますます近寄りがたい場所になった

 ▼米軍が58年に撤退することが決まると、農家は団結して国や県に陳情を繰り返し、翌59年に返還にこぎ着けた。当時は養蚕や稲作が曲がり角の時期で、戻った農地で何を栽培するかが問題だった

 ▼当時を知る農家、一倉勝さん(77)は「群馬でほかになかったブドウを選び、組合方式で栽培することになった。知らない作物を嫌う年配の農家の説得が大変だった」と振り返る。当初は市場で値が付かずに苦労したが、伊香保や草津の観光客の口コミで直販の道が開け一大産地に育った

 ▼現在の人気品種は皮ごと食べられるシャインマスカットだという。農家の苦心の歴史の結晶のような名産を丸ごと味わいたい。