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視点オピニオン21

書き初め大会 心を込め真剣に筆運ぶ

観音寺住職 五十木晃健
 
 年始には書き初め大会の指導をする。沼田市立薄根小学校では、県内でも特色のある書道教育の一環として、先生方のサポートと書道仲間である伊勢崎桑樹会の協力を得ながらの貴重な授業となる。

 最初は子どもたちに人気のある一休さんの話だ。「諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)」と一休さんが約550年前に書いた掛け軸のコピーをまず見せる。そして、「悪いことはしない、善いことをしよう。そうすれば自然と心が清く美しくなる」という意味を教え、書き初めは1年間、その教えのとおり過ごすための誓いだと話す。そして、上手下手が問題ではなく、心を込めて真剣に挑むことが重要だとも教える。

 まず心静かに、素晴らしい字が書けたと想像し気持ちを高めていく。沼田の冬の寒さは厳しく、体育館全体に張りつめた空気が漂う中、4文字程度の短い文字に、子どもたち一人一人の名前まで書き入れたお手本を渡す。お手本どおりに書く必要はないが、自分の名前が入ったお手本を見ながら、子どもたちは一生懸命に筆を運ぶ。

 書き上げた作品には必ず良い評価をする。たとえ乱雑であっても「今にも飛び出しそうでダイナミック」とか、こぢんまりした字には「優しそうで心が温まる」など、とにかく褒める。朱墨で添削することはしない。それでは個性を伸ばせないし、書道は苦手と思い込ませてしまうから。

 続いて、書道の楽しさを皆で分かち合う「つなげるスポーツ書道」だ。幅1.5メートル、長さ5.0メートルの特大紙をクラスごとに床に並べ、全員参加の団体戦になる。子どもたちの肩まである大きな筆に墨を含ませると、重さも増して容易ではない。1人が1画という責任と筆の重さに必死にならざるを得ない。1人が筆をおろすたびに歓声と拍手が広い体育館に響き渡る。

 子どもたちの興奮と熱気に包まれて仕上がった大作の余白に、その達成感をつなげるように自分たちの名前を書き込む。そして、見事な作品を体育館天井から壇上ぎりぎりの高さまで飾り、ここで再び歓声が沸く。子どもたち一人一人が真剣に取り組み、心を一つにして頑張った結果から得られる感動は想像以上に大きいようだ。

 最後に、それぞれの思いを込めた作品を背に記念写真を撮ると、指導のお礼に子どもたちが校歌を歌ってくれた。その歌声と笑顔から、書き初めを通し一休宗純禅師の教えである「清く美しい心、お互いを思いやる心、何事にも積極的に挑戦する心構え」を学んでくれたことが見てとれる。

 その陰にスポーツ書道の指導に関わっていただいた桑樹会の皆さんの助けがあってできたことを忘れてはならない。後日、寺に送られてきた子どもたちの感想をつづった寄せ書きをありがたく拝見し、しみじみ禅宗の坊さんで良かったと思う。



観音寺住職 五十木晃健 沼田市下発知町

 【略歴】太田市出身。関東短期大卒。36歳の時、諸事情で全てを失い、すがる思いで仏門をたたく。厳しい修行と規律の中にも心の平安を見いだし仏の道に生きることを決意。

2015/01/13掲載