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視点オピニオン21

日本人の宗教観 集落や祭りが心育む

臨床宗教師 井出存祐
 
 「25年後には35%の宗教法人が消える」(石井研士国学院大教授)。そもそも日本には宗教団体がどのくらいあるでしょう。2015年12月31日現在の宗教法人数は①神道系8万4909②仏教系7万7232③キリスト教系4657④諸教1万4448―合計18万1246法人という数になります。

 このように日本社会では多種多様な宗教文化が混在しています。神道では古くから各地に神社が祭られ、幕末維新期には多数の神道系教団が設立されました。仏教は6世紀半ばに移入され、さまざまな宗派が成立し、全国に分布するに至りました。明治維新以後も新しい教団が創立されています。また、中国から儒教や道教も伝えられ、諸宗教の中に根付いたものもあります。キリスト教ではカトリックやプロテスタントの諸教派が伝えられました。イスラム、ヒンズー教、ユダヤ教も活動をしています。

 「あなたの宗教は何ですか」と聞かれて「これです」と明確に応えられる日本人は何パーセントいるでしょう。「七五三の祝いは神社で」「結婚式は神前か教会で」「葬式は菩提(ぼだい)寺で」というのが日本人の通常儀礼です。儀礼として付き合い程度では宗教を理解しているとはいえません。

 しかし、日本人は特定の宗教団体に加入していなくても「宗教的」だと言われています。全国どこへ行っても小さな集落や村があり、鎮守の杜(もり)があり祭りがあって人々は憩いの時間をもっていました。これは大変良いことです。子どものころの祭りの思い出が宗教的と思える風習を形成していました。いまは少子化、高齢化で村祭りが成立しないのが現状です。おとぎ話や伝説も地域に密着したものです。神道の分野で研究し、復活してほしいと思います。

 仏教系各団体は墓じまいや散骨について、一定の方向性を示し具体的な指針を示す必要があります。簡単に「樹木葬」とか「散骨」と答えを用意する傾向がありますが、そう簡単に結論づけられないのが「こころ」を扱う問題なのです。戦没者の遺骨収集は、関係者が少なくなる中で一向に進まない大きな課題です。各宗教団体が研究を尽くしていません。国民はこうした宗教団体の存在と無気力の現状に対して、無関心ではいけません。改革革新の意思を示すべきです。

 被災寺院の例を挙げましょう。東日本大震災では少なくとも287カ寺が被害に遭った(全日本仏教会報告)。しかし、政教分離の考えから公的援助はありません。

 クリスマスは既に日本社会に溶け込んだ宗教的行事です。キリスト教関係者のみの企画だけでなく、各団体の協力を得て新しいものを考えたらいかがでしょう。「花まつり」は仏教行事ですが、多くの人々の知恵で失われていく地方と宗教を活性化させましょう。



臨床宗教師 井出存祐 前橋市龍蔵寺町

 【略歴】安中市出身。立正大経済学部卒。商業科教員として37年間公立高校に勤務。国際宗教研究所会員。安中市・実相寺院首(いんじゅ)。宗教法学会賛助会員。上州良寛会参与。

2017/09/05掲載