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視点オピニオン21

ひとり親世帯の貧困 社会の役割考えて

高崎健康福祉大社会福祉学科講師 石坂公俊
 
 子どもの貧困は子育て世帯の貧困問題でもあります。また、子ども本人には全く責任がないことから非常に共感されやすいテーマとなっています。一方で大人の貧困については自己責任の論調も少なくないように思います。果たして大人の場合は、自己責任と考えてよいのでしょうか。

 子どもの貧困についてさまざまな実態が可視化されるようになりました。とりわけ、母子ひとり親世帯との相関が高いと言われています。経済的な問題を背景に子育て、労働、教育など母子ひとり親世帯を取り巻く厳しい負担も少しずつ明らかになってきました。

 印象に残っている痛ましい事件があります。2014年9月、千葉県銚子市の県営住宅でこの部屋に住む中学2年の女子生徒が死亡しているのが発見されました。2年間にわたって家賃を滞納し、住居明け渡しの当日、シングルマザーの母親によって殺害された事件です。母親は「生活が苦しくなり、娘を殺して自分も死のうと思ったが死にきれなかった。家を奪われてしまって、住むところがなくなれば、死ぬしかなかった」と語り、多くのメディアにも報道された事件でした。

 事件についての詳細は書き切れませんが、何より中学2年生の女子生徒が亡くなったという事実を重く受け止める必要があると思います。もちろん母親の行動を正当化するつもりは全くありませんが、この親子がどのような状態にあったのかという事実認識に重点を置く見方も重要だと思っています。

 ややもすれば母親は生活保護の申請をすればよかったのに、しっかり就労していればよかったのに、相談機関に相談すればよかったのに、自己責任ではなかったのか―といったまるで自明であった解決策を行使しなかったことを問題視するような見方にはあくまでも慎重である必要があると思います。

 この親子がなぜSOSを出せず、この親子のSOSをなぜ社会が発見できなかったのかといった見方を前提にすると事件の捉え方は大きく違ってくるはずです。貧困の問題を考える際に、当事者に何ができたかではなく、この社会に何ができるのかという見方に立つことが大切なのだと思っています。

 最後に母子ひとり親世帯に育つことが貧困になると決まったわけではありません。あくまでもその傾向性が高くなるに過ぎないこともお断りしておきたいと思います。父子もあわせたひとり親世帯に属する10代人口はおよそ161万人であり、全体の13.4%に相当します。子どもの7人に1人がひとり親世帯で暮らしており、もはや少数派ではないことも私たちは認識しなければなりません。



高崎健康福祉大社会福祉学科講師 石坂公俊 高崎市行力町

 【略歴】高崎市出身。児童・高齢者福祉施設などを経て現職(公的扶助担当)。ホームレス支援、子ども無料学習会などの活動にも取り組む。社会福祉士。

2017/03/14掲載
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