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視点オピニオン21

昔のトンネル造り 苦労した測量にロマン

県山岳団体連絡協議会副会長 北原秀介
 
 上越線は湯檜曽駅からループで標高を稼ぎ清水トンネルに入り、谷川岳を貫き、土樽で再びループで標高を下げながら越後中里へ至ります。土木技術者にとっては、国内で最もロマンあふれるトンネルと言えるでしょう。

 土木構造物を正確に造るには測量の精度が命です。現代は衛星利用測位システム(GPS)など測量手段の発達で、非常に精度よく簡単なため苦労もロマンもないので、一昔前の方法を紹介します。

 地図上でトンネル線形が決められると、国土地理院が設定した基準点から経緯儀を使って角度を振りながら見通せる範囲で坑口までたどり着きます。そこにトンネルを掘削するための基準点を設置し、平面位置を決めます。坑口標高は、東京湾の水位を0メートルとして国道や主要地方道に2キロごとに設けられた水準点から、水準器を使って高低を計りながらトンネル坑口に至り、縦断位置を決めます。

 昔はこれからが大変で坑口の基準点から設計されたトンネルの線形通り山中を伐採しながら測量をして反対の坑口までつなぎます。これを中心線測量と言います。こうして地表面に描いた通りの角度で両方の坑口からトンネルを掘削するので真ん中で出合えるわけです。しかし、延長5キロ級のトンネルでも当時は数十センチの誤差が出るのも度々でした。そのため貫通地点に近づくに連れ、トンネル断面を少し大きめに掘ったものです。

 新清水トンネルを計画した時に測量を担当した技術者から話を聞く機会がありました。峻険(しゅんけん)な谷川岳で中心線測量は不可能です。1960年のことで、谷川連峰の一ノ倉岳・武能岳・白毛門・赤沢山の各頂上から各山頂をトランシットで見通して三角測量を行ったそうです。当然、快晴でなければ見通せないことから同じ地点で何日も過ごすそうです。また、晴れても陽炎(かげろう)が立つと測量不可となり、大変な苦労をしたそうです。結果は数センチの誤差と聞きました。新田次郎著『剱岳・点の記』を思い出しますね。

 話を清水トンネルに戻しますと、上毛かるたに「ループで名高い清水トンネル」があります。このループトンネルの測量も大変だったと想像します。掘削しながら坑内をいかに小刻みに精度よく測量したかがうかがえます。ループだと当然路面にカント(内側に傾斜)を付けて仕上げます。鉄道トンネルは足元がレールで拘束され、列車に許容される建築限界がありますから、非常に高い測量精度が要求されます。

 現代の測量は、衛星を使用することで正確な位置が表示され、距離は光波測距儀で瞬時に計測されます。経緯儀で角度を読み、スチールの巻き尺を引きずりながら距離を測っていた時代を知る人もいなくなってきました。昭和の技術屋の独り言でした。



県山岳団体連絡協議会副会長 北原秀介 安中市秋間みのりが丘

 【略歴】北海道出身。1976年に日本山岳会入会。建設会社で青函トンネル建設などに携わり、地質学の知識を生かし子ども向け教室も開く。2017年5月から現職。

2017/07/05掲載