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《移住者の四季 春4》館林・佐藤さん一家 人の縁結んで1周年 

 
 「保育園にお迎え行ってくるね」。館林市新宿のコーヒー専門店「copicopi」。豆を焙煎していた佐藤早苗がドリップ中の夫、雄一郎に声を掛けた。20分後、早苗と3歳の長男、龍の足音が響く。「帰ってきた」。雄一郎がうれしそうにつぶやいた。

 子育てと店舗経営を両立しやすい環境を求め、昨年1月に家族3人で横浜から移り住んだ。移住前の店と自宅の距離は徒歩20分。近いようで、頻繁な行き来は仕事に支障を来した。

 現在は、雄一郎の親戚が営んでいた金物店を改装した店舗兼自宅で営業中。店のキッチンと自宅の居間は扉一枚でつながり、夫婦そろって店先に出ても、子どもの息遣いを感じながら働くことができる。営業中の空き時間に、どちらかが家事をすることも可能になった。

 移り住んでからは、地方ならではの距離感も気に入った。人と人とのつながりが感じられ、家族が地域で受け入れられるのに時間はかからなかった。「都会ではいつも息苦しかった」という早苗だが、今は伸び伸び暮らせるおおらかな雰囲気が気に入っている。

 家族だけでなく、店も住民の生活に溶け込んできた。庭仕事の一休みや公民館でのイベント帰りにふらっと立ち寄ってくれるお客さんがほとんどで、気軽に入店してくれるという。農家のお客さんから自家栽培の果物をデザートメニューに使わないかと提案を受けて、コラボしたこともある。

 別々に訪れたお客さん同士が知り合いなんてこともある。久しぶりの再会で話が弾み「次は一緒に」と、人の縁を結び直す小さなきっかけになるうれしさを味わった。2人は店を「地域のコミュニティーの場として発展させたい」と考えている。

 開店からちょうど1周年の4月11日。店は満員で、客足はなかなか途絶えなかった。毎週通っているという女性客は「近くでこんなおいしいコーヒーが飲めるようになってうれしいの」とにっこり。常連の男性客も「10周年、15周年も祝ってあげるからね」と2人に語り掛けた。

 1年前は開店直後で、季節を感じる余裕はなかったという。今でも忙しい毎日だが、店が軌道に乗ったことは満員の店内が証明している。今年の春は城沼沿いのサクラ並木を家族3人で歩いたし、つつじが岡公園にも遊びにいく予定だ。(敬称略)

地域の人たちに支えられてきた佐藤さん夫妻のコーヒー店は1周年を迎えた