文字サイズを変更する
小
中
大
 

視点オピニオン21

知的財産アナリスト 製造業に必須の参謀役

イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎
 
 製造業は、わが国GDPの2割弱を占める基幹産業である(2015年版ものづくり白書)。また、他産業への波及効果の大きさを勘案すれば、それ以上に大きな意味をもつ。

 その製造業の世界で、流行語のように使われている言葉がある。「イノベーション」である。この言葉は「技術革新」と訳されることが多い。しかし、正しくは、技術革新は一つの手段であり、その結果、企業が利益を上げ、社会に変革をもたらすものを指す。

 つまり、製造業でイノベーションを起こすには、技を極めることだけでは足りず、ビジネスを想定した開発が必要なのである。しかし現実は開発を目的化し、とにかく質の高いものを作れば売れるという方向になりがちだ。その結果、技術は素晴らしいのにビジネスで負ける、という話が後を絶たないのである。

 この状況を生み出す原因は、情報軽視の企業文化にあると考える。打開するには、情報を集めるだけでは足りない。経営者の判断の助けとなる情報が必要なのである。

 一般に、製造業の開発方針に役立つ情報源としては、専門家へのヒアリング、展示会、ニュースリリースなどが挙げられる。しかし、これらは主観的な要素の強い情報だ。参考にはなるが、経営判断には、まず客観情報が欲しい。

 そこで注目されるのが、特許情報である。企業は自らの発明を守るため、あるいは他社をけん制するために、巨額の費用を使って特許出願を行っている。特許情報は、特許庁審査官の審査を通過し、権利化するために書かれた情報であり、技術の客観情報と言える。そして、出願後1年半を経過すると原則公開されるため、分析可能な情報だ。日本特許庁への特許出願は年間30万件以上あり、全世界での蓄積は1億件に迫るビッグデータなのである。

 この特許情報を分析し、開発方針を提言できる、企業の参謀役的職種がある。知的財産アナリストという。知的財産研究教育財団による民間資格であるが、そのスキルの効果から注目が集まっている。ちなみに、特許と言えば、弁理士という国家資格があるが、こちらは特許を出願する際の代理などが専門である。

 さらに、知的財産アナリストの活躍の場は、研究開発だけにとどまらない。そのスキルを活用し、企業買収(財務・法務部門)、自社技術の売り込み(営業部門)、人事評価(人事部門)にも貢献できる。また、対象業種は製造業だけでなく、特許出願が盛んなコンテンツ産業など実は幅広い。さらに、金融機関の融資での企業評価でも大きな力を発揮する。

 小生は、特許情報分析サービスを提供する、独立系知的財産アナリストだが、その需要の高まりを肌で感じている。次回以降では、特許情報分析の具体例を紹介する。



イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎 神奈川県川崎市

 【略歴】前橋市出身。中央大卒。特許事務所でマーケティング重視の特許情報分析を手がけ、2014年に会社を設立した。AIPE認定シニア知的財産アナリスト。

2016/12/25掲載
  • 上毛新聞を購読する
  • 上毛新聞に広告を載せる
URLを携帯へ転送 右のQRコードから上毛新聞モバイルサイト「じょうもばいる」にアクセスできます