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三山春秋

2017/08/29【三山春秋】 シルバー世代の移住は、頼もしいバイタリティーの表れなのだろうか。元前橋市職員の塚原…

 
 ▼シルバー世代の移住は、頼もしいバイタリティーの表れなのだろうか。元前橋市職員の塚原信孝さん(65)は来月、長崎・五島列島の小値賀島おぢかじまに渡る。島の臨済宗福善寺で住職だった叔父が2年前に亡くなり、後を継ぐためだ

 ▼塚原さんは東日本大震災の復興支援で福島県いわき市に派遣され、5年間の任期が終わったばかり。2012年度の本紙オピニオン委員としても震災復興に貴重な提言を寄せてもらったが、僧侶になるとは意外な転身だ

 ▼昨年から念入りに準備したという。週末を利用して長崎の寺で修行し、法要の所作や読経、必要な知識を身に付けた。妻の淳子さん(63)も一緒に行くことに賛成してくれた

 ▼「健康で世のため、人のために生きられるのは何より幸せ」と塚原さんは語る。土地にこだわって生きようとする人もいれば、人との縁を大切にしながら居場所を変える生き方もある

 ▼いわき市では都市計画や公営住宅建設に力を尽くした。派遣任期が終わっても絆は切れず、まちづくりで共に汗したいわきの地元区長とは、震災犠牲者の供養で来年3月にお経を上げに戻ると約束した

 ▼江戸中期の禅僧、白隠はくいんの教えに〈当処即とうしょすなわ蓮華国れんげこく〉とある。塚原さんは今を生きるこの場所の素晴らしさを思い、新しい土地へ赴く。高齢化社会の励みにもなるような、65歳の夢が広がる。