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視点オピニオン21

遊休農地を耕す 貸借の情報共有進めて

農業法人産直倶楽部広報 中島沙織
 
 昨年までは一人で約6反の田んぼを耕作していましたが、今年からは協力者数人と約60反の田んぼを耕作しております。私は代々この土地の農家ではないので、田んぼも畑も自分名義の土地を一切所有しておりません。なので、その全てが休耕地や耕作放棄地でした。

 農業者の高齢化などを理由に生じた遊休農地を改善する取り組みはどこの市町村でも積極的に取り組んでいると思います。しかし、私の場合、個人情報保護法の厳密化によってすぐ近くにある休耕地を借りたくても、土地所有者の連絡先を教えてもらうことができず、書類制作や交渉に多くの時間を取られました。

 地元の方々のご協力で、なんとか多くの地主の方と交渉をさせていただきました。地主の方のほとんどが「誰か作ってくれるなら任せたかった」との気持ちであったにもかかわらず、必要な情報が借り手と貸し手にスムーズに共有できていない現状の仕組みは何らかの改善が必要なのではないかと強く感じました。

 地主の方が田んぼを手放す理由の多くは小さな面積では手間暇かけても生活できるほどの収入にはならないからなのですが、私の地域ほど休耕地が目立つ地域はあまり見られません。同じ太田市内でも担い手がすぐに見つかる地域もあるのに、なぜこんなにも田んぼをやる方が少ないのだろうと疑問を持っていました。今年から共同作業している農家さんの話を聞き、「水の便が極端に悪い」からなのではないかと感じています。

 我田引水という四字熟語があるように、何日も自分の田んぼばかりに水が入るようにしてしまうことは、それより下流の田んぼに水が入らなくなってしまうので田んぼ農家としてはやってはいけないことの一つです。私の地区は太田市内でも最南端に近い水下にあり、田んぼの水路に水が来るのが6月20日頃と遅くなります。このため、田んぼに水が来てからでないと始められない代掻(しろか)きの前倒し作業ができず、水が来てから田植えが終わるまでの約2週間は一定期間に多くの作業が集中することになってしまい、とてもつらい期間となります。

 水路からの水の取り方も変わっており、排水と入水が同じであったり、そこに流れる水の量も少なかったりと、稲作に必要なこまめな水管理が難しい構造となっている田んぼが少なくありません。今年からお借りした田んぼの中にも田んぼに水を張ることができず作付けを断念した区画がありました。もともとの水量が少ないので仕方がないことかもしれません。ただ、別の仕事を持つ農家の跡取り息子が毎朝手間暇かけて水管理をするのはとても大変なことです。極端に休耕地化が進む地域には単に耕す農家を探すのではなく、耕作しやすい環境を整えることが必要であるかもしれません。



農業法人産直倶楽部広報 中島沙織 太田市高林北町

 【略歴】東京都出身。太田市の仲卸会社勤務を経て、関連の農業法人に移り、2012年に独立して農業を営む。農林水産省の農業女子プロジェクトメンバー。

2017/07/17掲載
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