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視点オピニオン21

きものの楽しみ 奥深い芸術性を纏う

日本文化の良さを伝える「和の事」主宰 栗原優子
 
 きものやゆかたで歩いていると、「よくお似合いですね」「季節に合ってますね」と褒めていただくことが多くなりました。でも、実は私、絵心が全くといっていいほどありません。「まさか!」と言われますが、本当なんです。

 では、なぜそんな私でも自分に似合うきものが選べるのか。それは、きもの・帯自体のデザインや染色や織りが持つ力が素晴らしいから、その力を借りて簡単に自分好みに組み合わせることができているのだと思います。多少の慣れも必要ですが、きもの独特のルールや季節感も知っていることで、どんな場面も気後れせず出かけられるようになっているのだと思います。

 きものは全身総柄でも絵になります。これが洋服だったらなかなかそうはいきません。絵柄には、古典的なおめでたい時に用いられる鶴、辻が花、松竹梅や御所車など数百年続く柄もあれば、大正から昭和初期にはやった銘仙のようなモダンデザインがあったり、現代の何にも縛られない視点をもった柄があったりと、バリエーションが無数にあります。柄の付き方できもののイメージも大きく変わります。あと、今でこそ「ボタニカル柄」(植物をモチーフとした模様)なんて言葉を聞きますが、きものの世界では数百年にわたってほぼボタニカル! 時代がきものに追いついてきたな、なんて思っています。

 染色や色味はさらに奥深いものです。天然の染料で染められた糸で織られた生地は、時間の経過とともに色が変わり、人が考えてはつくることのできない色になります。現代の染料で染められた、はっきりとしたビビッドな色もまたかっこいいものです。デザインされた絵柄にどんな色が入るかというだけで、そのイメージはだいぶ変わりますね。同じデザインでも色味ひとつで全く違うものに見えたりします。それから、衿(えり)や帯締め、帯揚げに差し色をすることで、きもの・帯をぐっと引き立たせることができます。

 きものやゆかたの形はほぼ一緒です。性別や年齢、着る場面によって少しずつ違いはあるけれど、平面的で四角いパーツがいくつか縫い合わされているきものに帯をする、という仕組みは大きく変わりがありません。なのに、これだけ長く愛され、海外からも注目され、文化として大事にされてきたのは、きものという枠の中につくられた景色や絵柄や色味が多種多様で、コミカルなものから超豪華なものまであり、私たちを楽しませてくれているからだと思います。また、きもの選びは洋服と違い、形よりも絵柄・色を楽しむ要素が強い分、芸術性が高くなっていきます。着るという実用性を前提にきものを捉えるよりも、きもの・帯自体が持つ雰囲気を感じ、それを纏(まと)えるということを楽しんでみてはいかがでしょうか。



日本文化の良さを伝える「和の事」主宰 栗原優子 みどり市笠懸町阿左美

 【略歴】桐生西高、新島短大卒。25歳で日本舞踊師範。旅行会社勤務の傍ら、2014年に日本文化の良さを伝える「和の事」を始め、着物関連の行事を実施している。

2017/07/26掲載
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