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視点オピニオン21

観音寺の花まつり 仲間と結んだ縁に感謝

観音寺住職 五十木晃健
 
 仏教には4月8日にお釈迦(しゃか)様のお誕生日を祝う「花まつり」という行事がある。小さなお堂を花で飾りたて、誕生仏に甘茶をかけてお祝いする。沼田市の天狗(てんぐ)の里にあるここ観音寺では、毎年月遅れの5月8日に開催している。しかし、よく知られた行事にもかかわらず、3年前まで参拝者が少なく、つつましやかなまつりだった。

 ところが、一昨年から大勢の人が集まり、盛大な「花まつり」となった。その多くは、観音寺を抱くようにある戸神山(別名石尊山)でご縁を結んだ人たちである。戸神山は「ぐんま百名山」で「三角山」と親しまれ、眺望も素晴らしく観音寺はその登山口にもなっている。山頂で皆が自然と集まりお茶を飲むうちに、いつしか私もその縁に結ばれていた。彼らは環境保全をしながら、倒木を彫って愛きょうのある動物を作り、夏にはスイカを頂上まで運び、登山客を「おもてなし」してくれる。僧侶である自分自身が登山仲間から「無償の愛」を実感した出来事だ。

 このように愛情深い人々が多く訪れるが、登山口の観音寺はさほど特徴のない山寺であった。そこで、登山者や地域の人々の癒やしになるようなシンボルを祀まつりたいと願い、2012年「ほほえみ十二観音」と名付けた12体の観音像を建立した。

 観音様とは、異なる立場から、私たちを救済し慈悲心で見守ってくださる。観音像一体一体に個性があり、12の観音像それぞれに良縁を結ぶ「慈結(じゆい)観音」、生きとし生けるものすべてに深い愛情を注ぐ「慈愛観音」、仲間たちとの友情や恩恵を授ける「慈水(じすい)観音」等の名前をつけた。登山道中の安全を祈り、訪れた人々皆に幸せになってほしい、という願いを込めた。

 すると、観音様のお導きか、いつしか多くの登山者が境内で足を止めるようになっていった。彼らは戸神山を純粋に愛するのと同じように、観音寺を大切にしてくれている。「花まつり」にも声をかけあって積極的に奉仕し、お茶会やミニコンサートの企画・開催、手作りカレーの振る舞いなど多彩に行ってくれた。登山仲間の無償の愛で、檀家(だんか)だけでなく地域の人たちでにぎわう、以前とは比べものにならないほど華やかな一大行事になったのだ。

 お釈迦様がご誕生の際に説かれた「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」という言葉がある。この大宇宙で、ただ私たち人間だけになし得るたった一つの尊い目的、使命がある。生まれ難い人間に生まれることができて良かった。人は幸せになるために生まれてきたことを意味している。お釈迦様と観音様が結んでくださった登山仲間とのご縁に深く感謝し、今、ここに生き自ら鍬(くわ)を握り、一所懸命、境内を耕して幸せの種をまき「ホッとする寺づくり」に取り込むことが、禅寺の僧侶としての役目であり使命だと思っている。



観音寺住職 五十木晃健 沼田市下発知町

 【略歴】太田市出身。関東短期大卒。36歳の時、諸事情で全てを失い、すがる思いで仏門をたたく。厳しい修行と規律の中にも心の平安を見いだし仏の道に生きることを決意。

2015/05/01掲載