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視点オピニオン21

戦争を伝える高校生 平和向き合う姿広がる

元・八重山平和祈念館職員 綿貫円
 
 沖縄では平和教育が大切にされていますが、戦後72年がたち戦争体験を直接聞くことが難しくなっていく中、どのように戦争の記憶を語り継いでいくのかが課題となっています。

 戦争の記憶を継承する新しい取り組みとして八重山平和祈念館では、高校生にガイドとして館内資料の解説をしてもらうプロジェクトを2014年度から始めました。私自身高校の時に地元の歴史に向き合ったことが今の活動につながっているので、その時期に祈念館に来てほしいとの思いが強くありました。石垣島内で募集をかけ、応募してくれた2人の高校生が平和ガイドとなりました。座学だけでなく、戦争遺跡を巡ったり体験談を聞いたりと実際に肌で感じる中で彼女たちの顔つきが変わっていきました。ガイドの2人には、自分が感じたことを言葉にして伝えてほしい、そうすることで聞き手にリアルに届くと思うと話していました。

 高校生平和ガイドの解説は、実際に戦争遺跡を歩いた素直な感想を織り交ぜた語りで、より当時の苦しさをイメージさせるものでした。また、体験者がつらくて言葉を詰まらせた場面と、高校生自身がそれをどう伝えようか悩む間がリンクして、聞き手が引き込まれるガイドになりました。解説を受けた方からは「同世代にガイドしてもらうと一生懸命聞こうと思ったし、言葉が頭に入ってきた」「高校生が頑張っているのだから、自分たち大人も何かしなければと思った」という感想をいただきました。平和ガイドを始めてから高校生の来館が増えたり、新たな活動を始める人が出てきたりとうれしい変化がありました。そして何より、戦争体験者をはじめ、地域の大人がとても喜んでいたのは、若い世代が語り継いでいくことでした。

 ガイドの2人は語り手になろうとした時、積極的に調べどう伝えようか悩んでいました。その過程はインプット、アウトプットをする練習になったと思います。また想像力も必要となるので、自分とは違うことや知らないことも受け入れたりイメージしたりする力が養成できると気づきました。この2人は、その後それぞれで自分がやりたいことをどんどん形にしていきました。平和ガイドを経験し、自分の思いを発することに対して自信がついたのだと思います。地元に向き合い、自分の言葉で語る高校生平和ガイドを「かっこいい」と言う中高生もいて、戦争の記憶に向き合うことへのイメージが変化したことを実感しました。

 この高校生平和ガイド養成講座は、受動的なことが多い平和教育を一歩進めることができたと思います。また若い世代が戦争の記憶を語り継ぐことにとどまらず、自己表現や他者理解の機会にもなり得るという発見がありました。



元・八重山平和祈念館職員 綿貫円 高崎市飯塚町

 【略歴】沖縄県石垣市出身。早稲田大卒、日本教育大大学院大修了。八重山平和祈念館では企画展の考案や戦争体験の聞き取り、高校生平和ガイドの育成に取り組んだ。

2017/07/13掲載