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視点オピニオン21

天文台の国際交流 アジアへの貢献に意義

県立ぐんま天文台 観測普及研究員 橋本修
 
 インドネシア・スマトラ工科大の学長がぐんま天文台を訪れた。計画中の彼らの新しい天文台の参考にするためである。第一線の研究が進められる本物の天文学の現場を公開し、それを用いて教育普及を実践するぐんま天文台特有の活動と思想は国際的にも高く評価されている。

 タイの国立天文学研究所には大小6カ所の天文台が設置されているが、ぐんま天文台の思想はそこにも色濃く反映されている。初代の所長となる天文学者がぐんま天文台に滞在し、彼らの天文台の構想を練っていった結果である。

 インドネシアのバンドン工科大は東南アジア地域最有力の理工系大学である。ぐんま天文台の設立に大きな貢献をしてくれた。設立後には、相互の連携協定を結び、さまざまな共同活動を行ってきた。学術研究のみならず、教育的な活動も活発であった。インターネットを通じて遠隔操作ができる望遠鏡を双方に設置し、それぞれの地域では見ることのできない南北反対側の天体をリアルタイムに観察するようなイベントも実施している。バンドンのボスカ天文台にある遠隔望遠鏡の建物には、ぐんま天文台を示すGAOの文字が大きく書かれており、我々の共同活動と友情の象徴となっている。

 フィリピンやベトナムなど、その他の国々とも数多くの共同事業を実施してきた。アジアの国々が多いのは、ぐんま天文台初代台長の古在由秀の意向によるところも大きい。国立天文台長を務め、すばる望遠鏡の建設も実現した彼は、戦後間もない頃に天文学の教育を受けた。貧しい時代であったが、米国の支援で研究を進め、世界有数の天文学者となり、日本の天文学を大きく発展させることができた。発展しつつあるアジアの国々に貢献することがその恩返しになるとの思いがある。そのため、若手の育成には特に力を注いだ。

 金銭や物質的な投機とは無縁の活動である。対等な立場での人的交流を基礎とした、共通の理解を確立したうえでの共同事業が全てである。

 さまざまな国から来た人々がぐんま天文台で出会い、交流を深める機会も少なくなかった。その結果、東南アジアにおける大規模な天文学の共同連携組織が設立され、彼ら自身の国際的な天文学の活動の中核として発展している。

 国際化と言った時、市場や観光客を求める物質的な活動が注目されることも少なくない。しかし、そのような結果は、双方の相互理解に基づく人としての交流が成立してから醸し出されるものであり、まずは自らも損得抜きで相手の懐に入っていく必要がある。相手に認めてもらうためには自らの特技や実力を十分に磨いておく必要もある。天文台の場合、基本機能である観測や研究能力がやはり最大の武器であった。長年の国際交流を通じての実感である。



県立ぐんま天文台 観測普及研究員 橋本修 前橋市大友町

 【略歴】東京都出身。東京大理学部天文学科卒。理学博士。成蹊大工学部助手、東京商船大非常勤講師などを経て、1999年から現職。群馬高専非常勤講師。

2017/07/04掲載