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視点オピニオン21

「まち」について考える 歴史踏まえ未来描こう

本屋併設のデザイン事務所「マップデザイン研究室」代表 斎藤直己
 
 今回は、「まち」について考えようと思う。今、桐生市の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に事務所(兼ふやふや堂)があり、近所で開催される買場紗綾市を手伝っている流れで、いわゆる「まちおこし(まちづくり)」に少し関わっている。ここでいうところの「まち」が示している場所はどこだろうか。桐生市ということなのだろうか、とふと疑問に思う。

 桐生市とひとくくりで言っても、さまざまな場所がある。私は桐生市の川内町(の奥、名久木という地域)で生まれ育った。重伝建地区の本町と名久木では、同じ桐生市でもやはりいろいろな面で違いがある(本町は京都に趣が似ているところがある)。興味があってインターネットで少し調べてみると、明治までは、本町のある桐生新町と川内などの他の町村は山田郡の中の別の町(村)だったことがわかる。要するに桐生市の中で本来の桐生という地域は「桐生新町」と言われている地域になる。自分が関わっている「まち」というのは桐生新町ということがわかった。

 「まちおこし」が行われる「まち」というのは、住宅地や田舎や山村ではなく、こういった旧市街が多いのではないかと思う。歴史(伝統)があり、文化がある「まち」だからこそ「おこし」甲斐(がい)があるのだろう。

 「まち」が元気になるには、血液となる「人」が動かなくてはいけない。さて、それではどのようにこの「桐生新町」に人を動かしたらよいのだろう。人を呼ぶための観光名所を作るだけというのは、あまり向いていないと思う。今、本町周辺では、とてもうれしいことに、ものづくりを仕事とする人など、移住したり仕事場を構える人が少しずつ増えてきている。そういう人を少しずつ受け入れていくのがよいのではないだろうか。生活したり仕事をしたりする人が増えていけば、自然とほかの店も増えていく。個性的な店や工房が増えて、住んでいる人や働いている人が楽しく過ごせる地域になっていけば、外から遊びに来る人も増えていくだろう。無理に観光名所を作って、消費されていく「まち」よりは、そのような味わう「まち」になっていってほしい。

 「まちおこし」というのは、こうやればうまくいくといった簡単な方法があるわけではないと思う。年老いて弱った「まち」を、少しずつ揺すって、「ねえ、そろそろ起きて」とやさしく「起こさ」なくてはいけないのではないだろうか。じっくりと歴史の文脈を踏まえて、できるだけそこに住んでいる人たちが中心になって、5年後、10年後の先、こういう「まち」になったらよいなと思い描いていく必要があると思う。桐生新町は、とても魅力のある町だと思うので、新たな輝きのある町になるよう微力ながら力になれればと思っている。



本屋併設のデザイン事務所「マップデザイン研究室」代表 斎藤直己 桐生市宮本町

 【略歴】桐生高、早稲田大卒。マップデザイン研究室を創業し、2012年に桐生市の旧早政織物工場に移転。毎週金曜に事務所の一室で本屋「ふやふや堂」を開店。

2017/07/11掲載
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