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視点オピニオン21

海外ファミリー分析 グローバル戦略の初歩

イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎
 
 今回は、特許情報を使った分析のうち、海外ファミリー情報の活用を紹介する。

 近年では、多くのビジネスにおいて、グローバル戦略の策定・強化が避けて通れない状況になっている。

 それは、世界の総人口が拡大していく中、わが国では減少基調に入っている一点をとっても明らかなことであろう。国内市場にとどまってジリ貧になるよりも、積極的に外に出て、海外での売り上げを伸ばし、企業をもっと成長させたいという経営者は多いことと思う。

 ではどういったビジネスをどこの国で展開させていくか。検討するには、やはりまずは現状把握が重要となる。この点、特許情報における海外ファミリー情報が役立つ。

 特許権の効果は、出願し、権利化できた国においてのみ有効である。そのため、ビジネスをグローバル展開し、各国において、その独占排他的な効果を得たいと考えた場合、関係各国へそれぞれ特許出願をしなければならない。一般的には、販売する国だけでなく、生産する国へも出願しておくべきである。

 その結果、同じ発明や関連発明を複数国に出願するというケースが生まれる。その同一・類似発明群を一般に、ファミリーと呼ぶ。同一国内の出願であっても、分割出願などがなされた場合は、それらもファミリーの一部とされるが、グローバル戦略を検討する上で重要なのは、ファミリーのうちでも、海外ファミリーの情報である。

 海外ファミリーの情報をひもとくことで、今開発中のわが社の技術に関連した技術が、各社でどの国へ出願しているのかが分かる。これをしっかり把握しないまま、思いつきで突き進んだグローバル展開は極めて危険と言える。

 試みに、前回の産業動態分析で明らかとなった、群馬県内での特許出願件数上位企業について、その海外ファミリーを調べ、グローバル展開を確認した。

 すると、特許出願件数首位のソフィア(本社・桐生市境野町)と、第3位のナカヨ(本社・前橋市総社町)は、海外ファミリーは共にゼロ件だった。つまり、国内に特化したビジネス展開をしている企業だと読み取れる。

 一方、第2位のミツバ(本社・桐生市広沢町)は、欧州、中国、米国に多くの出願が認められ、また、第4位のサンデンホールディングス(本社・伊勢崎市寿町)は、中国と米国に傾斜がかかっていることが分かった。

 このように、営むビジネスやプレーヤーによって、グローバル展開の進め方は、大きく異なることが分かる。

 大切なことは、「グローバル戦略」や「海外展開」という言葉に踊らされず、自他の状況を冷徹に見定めることだ。そのためには、まずは特許情報のような客観情報把握が第一歩と言えるだろう。



イノベーションリサーチ副社長 武藤謙次郎 神奈川県川崎市

 【略歴】前橋市出身。中央大卒。特許事務所でマーケティング重視の特許情報分析を手がけ、2014年に会社を設立した。AIPE認定シニア知的財産アナリスト。

2017/08/20掲載