梅雨に映える “青い実”

梅の実の収穫作業がピークを迎えた。本県は全国第2位の生産地で、東日本ではトップの座を誇る。梅は古くから早春を彩る花として愛され、その実は梅干しや梅酒、ジャム、ジュース類などに加工され、私たちの食卓を潤している。疲労回復や微生物の繁殖を抑える働きがある梅。暑さが増す中、調理に少し取り入れる工夫をしてみてはいかが。

梅栽培 高崎市
永井 保伸さん(47)

本県の西上州には「群馬三大梅林」と言われる安中市の「秋間」と高崎市の「榛名」「箕郷」の三つの梅林が広がっている。

榛名山南麓の箕郷町には、関東平野を一望する丘陵300haに約10万本の梅の木がある。永井さんの梅林は5カ所に点在しており、栽培面積は合わせて5haに上る。

栽培品種は、梅酒用の白加賀など10種類。収穫期を迎えて永井さんは連日、早朝からパート従業員とともに、青々とたわわに実った梅の実を枝からもぎ取り、コンテナに集めてJAに出荷したり、梅の加工所に運んだりと大忙し。「今年は豊作なので大変です」と話す永井さんの日焼けした顔に笑みがこぼれた。

収穫した梅をコンテナに入れて加工所に運ぶ永井さん

父親から基本を学ぶ

永井さんが梅の栽培に携わるようになったのは8年前。東京農大を卒業後、書店に15年間勤務。大学時代も本屋でアルバイトをしたほど本が好きだったが、農家の長男ということもあって農業を継いだ。

祖父の時代は梨作りやジャガイモ、トマトの契約栽培が中心。JA職員だった父親の佐保さんも梨、梅の栽培や牛の肥育などを行っていたが、JA退職後に梅の加工を始め、作付を増やし始めた。永井さんの就農後は急速に栽培面積を広げ、現在は梅と加工用に使うシソ栽培、そして梅の加工品作りを専門に行っている。

サラリーマン時代、草刈りくらいしか手伝ったことがなかった永井さんは、佐保さんが亡くなるまでの3年間、栽培技術や梅干し作りの基本をみっちり教わった。

「大学では堆肥の研究に携わったので、少しは役に立っています」と永井さん。当初から鶏糞などの有機肥料を主体に、減農薬栽培を心掛けている。実際に日当たりや風通しをよくするせん定を入念に行い、病害虫の発生を抑制して、消毒の回数を通常の3分の1まで減らしているという。

完熟の小梅を加工

白加賀種と並んで永井さんが栽培に力を入れている品種が、小梅の「織姫」だ。適期収穫を心掛け、完熟したものをすべて手作り加工品の原料として利用している。加工部門の中心は弟の寿樹さん(41)が担っている。

保存料や合成着色料を一切使わず、塩と自家栽培のシソのみで漬け込んだこだわりの梅干しは、永井さん兄弟の自慢の商品だ。ほかにも梅ジュースや練り梅、粉末の梅干しを製造している。「考えれば新たな加工品がまだまだ商品化できるはず。ドレッシングやゼリーなど梅の魅力を生かしたものを開発していきたい」

常に前向きな永井さんは、高崎市の認定農業者の会が立ち上げた勉強会「農業者先端技術情報化研究会」にも参加。会員仲間と6次産業化の戦略について研究している。この中で既に永井さんの梅を使った梅ギョーザと梅シューマイを開発し商品化が実現している。

「これからも消費者が喜ぶこだわりの梅を作り続けたい」と意欲的だ。


元気な暮らしに役立つ栄養のお話…榮 昭博 桐生大学医療保健学部栄養学科教授 小粒でも 疲労回復効果

梅が出回る季節になりました。今回は、梅について、特に梅成分の栄養学的効能についてお話します。

成分特性

梅は、バラ科サクラ属の落葉高木で、その果実は食用となります。原産地は中国南部ですが、日本にも自生していました。果実にはクエン酸、リンゴ酸などが2.5?6.5%含まれ酸味が強く、熟成に伴ってクエン酸が増加しリンゴ酸が低下します。梅の核にはアミグダリンがあり、これ自体に毒性はありません。しかし、未熟な梅の核は軟らかいため砕けるとエムルシンという酵素によって分解され、シアン化水素(青酸)が生じます。これを食すると嘔吐、下痢、痙攣を引き起こすことがあります。そのため、梅は生食には不向きです。青酸は、猛毒ではあるものの加工・長期保存すれば分解されて無害になります。それ故、梅は加工して食することが必要です。主な加工品は、梅酒、梅漬け、梅干し、梅シロップ、梅ジャムなどです。

栄養学的効果

  1. クエン酸
    1. 食欲増進:クエン酸などの酸味成分は胃液の分泌を促進し、食欲増進に効果を発揮
    2. 疲労軽減効果:梅酢ポリフェノールと同時に摂取した場合その効果が増大
    3. マウス小腸でのカルシウム吸収促進作用
    4. クエン酸摂取による運動パフォーマンスの向上
  2. 梅肉エキス
    1. 潰瘍性大腸炎改善効果:ラットに人工的に潰瘍性大腸炎を形成させ、梅肉エキスを経口投与した結果、盲腸、結腸及び直腸の潰瘍が軽減することが示された
    2. 高血圧の抑制と動脈硬化の予防:ラットの実験では、梅干しには血圧の上昇を抑える効果(アンギオテンシンⅡの活性化の抑制)が示された
    3. 血糖降下作用
    4. 抗腫瘍効果、抗酸化作用
    5. 糖尿病及び高脂血症改善効果