カラフルに 食卓を彩る

赤や黄色などの色彩豊かな夏野菜・パプリカ。スーパーなどで一年中購入できるが、7~10月が旬で、ピーマンのような苦味がなく、夏の最盛期は一番甘みがある。生のままでよし、煮ても炒めてもおいしく食べられるパプリカを使って、サラダやピクルス、マリネ、野菜炒めと、思いのままに調理を。きっとカラフルな食卓になるはずだ。

パプリカ栽培 渋川市赤城町
今井 慶子さん(39)

JR敷島駅から車で5分ほど坂道を上ったあたりに、数棟のビニールハウスがある。農家から借りたそのうちの2棟で、今井さんはパプリカを栽培している。

ハウス内をのぞくと、人の背丈くらいまで成長した400本の苗に、1棟は鮮やかな赤、もう1棟は光沢のある黄色に染まったパプリカの実が、無数に付いているのが見えた。

「棟別に色分けして栽培しています」と今井さん。品種はいずれも「ビバ・パプリコット」という、家庭で消費しやすい小型の食べきりサイズ。2色を合わせたパッケージは、カラフルでとても人気があるという。

収穫作業は主に夕方から。「今年は猛暑の日が多く、ハウス内での日中の作業は暑くて大変です」と苦笑する。

収穫したばかりのパプリカを手にする今井さん

農家レストラン夢見て

今井さんが2年間の農業研修を経て就農したのは、2年前の春。大学を卒業後、大手電機メーカーでプログラマーとして働いていたが、料理の楽しさに目覚めて、1年半で退職。イタリア料理店に勤務したり、友人とイタリアンレストランの立ち上げなどを行ったりした後、農家レストランの開業を夢見て、材料となる野菜などの栽培を決意した。

料理の腕を磨くためイタリアに渡り、農家レストランで働いたことがある。「その店は客のオーダーを聞いてから、畑で材料を収穫して調理していました。新鮮な素材が料理をおいしくしていることを学び、感動しました」と、今井さんは当時を振り返る。

パプリカを栽培の中心に据えたのは、収穫期間が長く、大型の機械化を必要としないことが主な理由。さらに、日本で栽培されるようになって20年足らずと、歴史の浅い野菜であることも今井さんの背中を押した。

国内に流通しているパプリカの9割は、韓国やオランダからの輸入品。実が青い段階で収穫し、輸送の間に熟すのを待つため、鮮度や味に差が出る。「完熟で新鮮なパプリカを、レストランや食卓に届けたい」と、今井さんは固く心に決めた。

すべての作業を1人で

JA赤城たちばなパプリカ組合に所属し、研修会などを通じて、少しずつ栽培技術の向上を目指している。

パプリカは繊細な野菜で、生育適温の幅が狭く過湿や乾燥にも弱い。そこで、湿度を保つための小まめなかん水、適切な温度管理、計画的な病害虫防除などが重要になる。今井さんは、減農薬や労力の軽減などを目的とする害虫防除として、アザミウマ類やハダニ類の天敵昆虫を導入している。

「最初の年は作業工程が分からず、パニックに陥り、胃炎を発症してしまいました」。ようやく慣れてきたとはいえ、土作りから苗の定植、水や肥料の管理、わき芽摘み、収穫、包装、出荷まですべて1人でこなさなければならない。「正直なところ大変ですが、喜んで食べてくれる人がいると思うと元気が出ます」と今井さん。露地でハーブやオクラ、ナス、ズッキーニなども栽培しており、パプリカとともに知り合いのレストランや直売所、JAなどに出荷して喜ばれている。


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パプリカは、ナス科トウガラシ属1年生草本。トウガラシやピーマンの仲間である。原産は中南米で、コロンブスがヨーロッパに広めたといわれている。日本では未熟果で緑色の小振りなものをピーマン、完熟させたベル型・大型・肉厚で赤、だいだい、黄色などカラフルなものをパプリカと呼んでいる。

日持ちの良さと価格の面から、2016年国内流通品の約9割、40,000tが輸入品で、韓国、オランダ、ニュージーランド産がほとんどである。国産品に目を向けると、ピーマンが約120,000t出荷されているのに対し、パプリカは約4,000tしかない。パプリカは完熟させなければならないので、通年で出荷するためには、温度、光、CO2などの環境管理・制御可能なグリーンハウスが必要であり、設備投資のコスト面で課題がある。

生活習慣病予防

ピーマンと比較すると、一般成分の大きな違いはみられない。ところが、ビタミン類の含有量の違いは顕著である。抗酸化ビタミンの一つであるビタミンCはピーマンの約2倍、そしてビタミンEは3?6倍となっている。見かけの色と同様に、ビタミンAの前駆体となるカロテノイド系色素含量は、ピーマンと比べると高く、β-クリプトキサンチンは黄パプリカで9倍、赤パプリカでは70倍以上含まれている。

最近、β-クリプトキサンチンが閉経後の女性の骨粗しょう症のリスクを軽減する因子であり、温州みかんが「機能性表示食品」として登録された。他にも、2型糖尿病や肺がんの抑制作用なども報告され、生活習慣病予防に期待される機能性成分である。パプリカには赤色を呈するカプサンチンが豊富に含まれ、赤色を呈するカロテノイドほど、一重項酸素に対する抗酸化活性が強いことが知られている。ミカンを食べると皮膚が黄色くなるといわれるが、実際にこれらのカロテノイド類の体内への吸収率は高い。パプリカを継続的に摂取し、血中カロテノイド濃度を維持することで、酸化ストレスを軽減し、健康効果を発揮することが期待できる。

ビタミンP

紫斑病に対する有効成分としてビタミンPがパプリカなどから見いだされた。これは今で言うポリフェノールのことであり、ヘスペリジン(柑橘類で有名)とルチン(そばで有名)の混合物のことを指す。これらは毛細血管の異物の透過を防ぎ、抵抗性を高めるだけでなく、血中の中性脂質量を低下、血圧改善作用、ビタミンC保護作用などのさまざまな生理機能が報告されている。

調理・加工

完熟ピーマンであるパプリカは肉厚でありながら、肉質は軟らかい。また、ピーマン特有の苦味がなく、甘味や香りが強く、その彩りからサラダへの需要は大きい。また、パプリカ色素は水に溶けにくいため、酢漬けのような漬物やマリネにしても鮮やかな色合いは保持される。さらに、カロテノイド全般に加熱しても安定性が高いため、油を使った炒め物にも適している。