鍋物や漬物、 炒め物にも

「冬菜屑掃きて朝市終りけり」(久保きよ志)。冬菜とはハクサイのこと。朝市に山積みされたハクサイが飛ぶように売れた様子が、この句からうかがえる。初冬の風物詩に欠かせない冬菜は、霜にあたるとおいしさが増すといわれている。冬に不足がちなビタミンCやミネラルをたっぷり含んでおり、格好の供給源だ。調理を工夫してぜひとも旬の味を堪能してほしい。

ハクサイ栽培 千代田町
田中 盛栄さん(61)

ツル舞う形の群馬県。その頭部に位置する邑楽館林地区は、ハクサイの一大産地となっている。17年前から「邑美人(むらびじん)」のブランド名で市場に出荷され、首都圏を中心に浸透している。

収穫を迎えた田中さんの畑でも、先が緑色をした太い円柱状のハクサイが列をなしている。よく見ると、葉が広がらないように紐でしっかり縛ってある。「芯の部分を寒さから守るためです」と田中さん。霜が降りる前に、妻の久美子さん(58)、長男の栄樹さん(27)とともに、3週間がかりで作業を行った。

田中さんは1株引き抜くと、左手で抱えるように持ち、根元部分を専用の包丁できれいに切り落とした。1株の重さは3~4kgになるという。「年末に暖かい日が続いたので、出荷は例年に比べて半月以上早まりました」と言いながら、収穫したばかりのハクサイを軽トラックの荷台に積み込んだ。

収穫したハクサイを段ボール箱に詰める田中さん

「邑美人」として出荷

農家の跡継ぎとして田中さんがハクサイの栽培に携わったのは20歳のとき。米、麦と並んで家計を支える作物として徐々に栽培面積を広げ、現在は1.1haで露地栽培に取り組んでいる。

栽培品種は「きらぼし90」が中心で、9月上旬に種をまき、下旬に定植を行う。水に弱いため生育期は排水に気を付け、追肥や雑草取り、病害虫対策などを怠らない。10aあたり3000~3200株を定植しており、年間の出荷数は約3万株に上るという。

「すべて『邑美人』としてJAに出荷しています」と田中さん。各農家の品質をそろえるため、結球度や葉色、株尻、病害虫対策、花芽の長さ、重量などにおいて、細かな基準を設けてチェックしている。

JA邑楽館林の西邑楽白菜部会で、部長として100人の会員をとりまとめる田中さんは、技術講習会や研修会などを積極的に開いて、品質向上や収量アップに努めている。

葉が肉厚でやわらか

一般にハクサイは、冬になると芽の成長が抑えられてそのまま結球するため、糖分が蓄えられておいしくなると言われている。とりわけ、田中さんらが作る「邑美人」は、葉が肉厚で甘みがあり、しかも繊維質が少ないためやわらかく、煮崩れしにくいので鍋物に向いているという。

「わが家は鍋料理の具材として使うことが多いですね」と久美子さん。キムチが好きな栄樹さんのために「キムチ漬けもよく作ります」と話す。最近はたるで塩漬けする光景をあまり見かけなくなったが、浅漬けやサラダ、炒め物などとして幅広く利用されている。

「多くの人に新鮮でおいしいハクサイを食べてもらいたい」と、田中さんは定植前に必ず畑の土壌診断を行い、土壌の良し悪しに神経を注ぐ。「pH6~6.5が理想です」と言う。また、最盛期は午前と午後の2回、収穫作業を行って新鮮なうちに出荷している。露地栽培だけに天候に左右されやすいのが悩みだが、品質へのこだわりは人一倍強い。

*制作協力/群馬県農政部

元気な暮らしに役立つ栄養のお話…熊倉 慧 高崎健康福祉大学農学部設置準備室 冬野菜の主役 白菜

寒くなってきたこの季節、食卓に登場してくるのが鍋。そんな鍋における冬野菜の主役ともいえるのが「ハクサイ」。煮てよし、炒めてよし、漬けてよし。

今回はハクサイについてお話します。

ルーツ

ハクサイはアブラナ科アブラナ属の草本で、そのルーツは中国にあります。しかしながら、ハクサイの野生型は発見されておらず、カブ類とタイサイ類との交雑から生じたものという説が有力です。

また、ハクサイの種類には、不結球型、半結球型、そして、結球型の3種類があります。一般的に不結球型および半結球型のものを山東菜と呼び、結球型のものをハクサイと呼びます。私たちが普段食している結球型のハクサイは江戸時代末期から明治時代に日本に入ってきたもので、日本での栽培の歴史は比較的浅いです。

農林水産省の作物統計調査によると、平成29年の全国のハクサイ収穫量は880,900tで、茨城県(243,700t)や長野県(235,200t)で収穫量が多く、群馬県でも27,900tが収穫されています。

栄養成分

ハクサイの一般成分について見てみましょう。日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、生のハクサイ100gあたりのエネルギー量は、14kcalで、水分95.2g、たんぱく質0.8g、脂質0.1g、炭水化物3.2g、そして、灰分が0.6gとなっています(表1)。

ハクサイはアブラナ科野菜であるために、ダイコンと同様、イソチオシアナートと呼ばれる成分が特徴的です。イソチオシアナートは、血小板凝集抑制作用や抗腫瘍作用などが期待されています。イソチオシアナートは、細胞内に存在するグルコシノレートに、ミロシナーゼと呼ばれる酵素が反応することで生成される化合物です。自然界では、アブラナ科の植物が昆虫などの外敵から攻撃された際、身を守るために有効であると考えられます。

浅漬け

ハクサイは漬けてもよしの野菜です。細切りしたハクサイを2%の食塩で浅漬けした場合、20時間後のアミノ酸総量は生の状態の約1.6倍になっています。また、食物繊維についても、生の状態と比較して、塩漬けしたものでは約1.4倍となっています。これは、浸透圧刺激によりハクサイ中の水が抜け、アミノ酸や食物繊維などの成分が濃縮されたことを意味します。ハクサイの浅漬けは食物繊維やアミノ酸などの栄養成分を効率的に摂取する良い方法であるといえます。