旧幕府、新政府を風刺した「大津之連中睡眠の図」。小栗は左側中央の「槍持ち奴」として描かれているという(若林さん提供)

 浮世絵師の河鍋暁斎きょうさいが明治維新後に手掛けたとみられる風刺画「大津之連中睡眠の図」に登場する人物の一人が、高崎市ゆかりの幕臣、小栗上野介忠順(1827~68年)とみられることを、風刺画研究家の若林悠さん(53)=大津市=が特定した。小栗は口に錠をかけられ、やりを持った威勢のいいキャラクター「槍持ちやっこ」として表現されており、江戸市民が抱く親幕府、反維新の思いを表現していると指摘する。

 小栗は幕末に横須賀造船所(神奈川県横須賀市)を建設するなど近代化を進め、新政府軍に無実の罪で斬首された。若林さんによると、風刺画は旧幕府側に対する取り締まりが厳しくなる中、江戸時代に土産物として売られた大津絵のキャラクターに将軍家や幕臣、維新諸藩を当てはめ、政治的主張をにおわせている。

 左側は旧幕府、右側は新政府、上方のてんぐは鼻の高い外国人を意味し、幕府側は小栗の他にも14代将軍の徳川家茂と家茂に嫁いだ皇女和宮、越前の松平春嶽らが表現されている。槍持ち奴姿の小栗は「『幕府が強かった間に小栗の進言を聞き、薩長らをたたくべきだった』という江戸市民の思いが表現されたもの」といい、槍に描かれた顔は近代化に協力したフランス人を意味するいう。

 若林さんから連絡を受けた小栗上野介顕彰会の市川平治会長(74)=高崎市=は「口に錠をはめられて話せない姿が、正論を直言したことで幕府内でも立場が悪くなっていた小栗をうまく表現している」と評価する。

 若林さんは約20年にわたって風刺画を研究しており、「逮捕されないよう、庶民の本音を表すところが風刺画の面白さ。真の制作意図を群馬の人に知ってほしい」としている。