肝炎ウイルスや生活習慣により、肝臓の機能不全に陥る「肝硬変」。10年生存率が2割に満たない肝がんを発症するリスクもある。抗ウイルス薬などの進歩で患者数は減少しているものの、厚生労働省によると、40~50万人が罹患(りかん)しているとされ、早期発見、早期治療が求められる。肝硬変の原因や予防策をはじめ、肝臓の機能を高めるとされる栄養やそれを含む食材、効果的な運動方法を紹介する。

沈黙の臓器

 肝臓には主に、タンパク質や脂肪の合成・代謝、有害物質を分解する解毒作用、糖分などの貯蔵や放出する機能があります。

 肝硬変は、名前の通り「肝臓が硬くなる病気」です。ウイルス肝炎などの慢性肝障害が進行し、肝細胞の破壊と再生が繰り返され、肝臓内に線維が増える「線維化」により、機能する細胞が減り、血液の流れや肝機能が低下します。患者は男性が6割で、難治性の肝がんを発症する可能性が高い「前がん状態」ととらえ、早期発見、早期治療に努めることが肝心です。初期を「代償性肝硬変」、進行すると「非代償性肝硬変」と呼ばれます。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、基本的に肝硬変になっても初期は無症状なことが多いです。白目が黄色くなる黄疸(おうだん)、腹水、吐血、下血、褐色の尿、手のひらが赤い、意識障害といった症状が現れたときは、進行していることが多く、すぐに専門機関を受診する必要があります。肝臓に血液が流入しにくくなった血液が、胃や食道に静脈瘤(りゅう)をつくって破裂したり、肝がんを発症したり、昏睡(こんすい)状態に陥ったりして命に関わります。

増加する「メタボ肝炎」

 原因は多いものから、C型肝炎ウイルス、アルコール、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH、別名メタボ肝炎)、B型肝炎ウイルス。日本肝臓学会によると、2007年にC型とB型で患者の7割を占めましたが、治療薬の進歩で14年は5割弱に。C型とB型はともにかつては輸血や注射器具の使い回しで感染し、さらにB型は母子感染、性交渉などでも感染します。一方、アルコールは07年と比べて14年は2倍に迫る約25%、NASHは4倍以上の9%を超え、生活習慣による発症割合が大幅に増えています。ウイルスもなく、大酒飲みでもなく発症するNASHは、食生活の乱れや運動不足が原因です。糖尿病、高血圧、肥満、大量に飲酒をする方は、肝硬変を発症するリスクが高いため、日ごろから塩分控えめな食事や適度な運動、適量の飲酒を心掛けてください。

一度はウイルス検査を

 近親者で肝炎ウイルスの陽性者がいる場合は注意が必要で、特にB型は家族内での発生が多いです。症状が現れにくいので、血液検査が早期発見に役立ちます。各市町村や保健所、職場の健康診断で、肝炎ウイルス検査を受けることができるので、一度は検査を受けてください。妊婦や手術を受ける患者さんでは、本人のためだけでなく、医療関係者の感染を防ぐ目的でも同検査をしています。肝炎ウイルスは、食事や風呂で感染しませんが、血液や体液は感染リスクがあると認識してください。B型はワクチン接種をすれば、抗体ができて感染しません。16年10月から0歳児を対象に、B型肝炎ワクチンの定期接種が始まりました。


 B型とC型肝炎ウイルスの治療は、かつて強い副作用がありましたが、現在、B型に「核酸アナログ」、C型に「直接作用型抗ウイルス薬」の副作用が少ない治療薬が開発され、B型のウイルスを抑制し、C型のウイルスを高率に消失させています。B型、C型肝炎はいずれまれな病気となるでしょう。

 C型が進行すると血小板が低下し、肝がんの併発も増加します。できるだけ早い時期にウイルスを排除し、酒やたばこなどの増悪因子も減らすことが肝要です。C型が体内から排除できたとしても、がんの発生リスクは残るので、定期的な受診が必要です。原因を除く治療は有効ですが、硬くなった肝臓をすぐに正常の肝臓にすることはできません。究極の治療として肝臓移植がありますが、日本では海外に比べてドナーが少なく、年に400例程度にとどまり、うち8割は家族などからの部分肝移植です。

 肝がんを発症しても、3センチ以下の腫瘍は焼き切ることができ、大きな腫瘍でも手術や重粒子線治療、がんの発育に必要な酵素を阻害するTKIという抗がん剤も有効です。免疫細胞が、がん細胞を攻撃できるようにする「免疫チェックポイント阻害薬」が、昨年から肝がんにも適用になりました。従来の抗がん剤より、予後の改善が認められています。たとえ進行していても、治療は進歩しています。決して諦めないでください。

 メタボ予防には、有酸素運動が一番良く、筋肉には肝臓の働きを補助してくれる役割があります。最近は週2回程度、趣味の硬式テニスを楽しみ、身体的効果だけでなく、ストレス発散にもつながり、リフレッシュできています。「ベジファースト」で野菜をしっかり、高カロリーを避けた食事を取り、適正体重を保つようにしています。(高木)


 

肝硬変の治療薬
栄養障害を 改善しよう

 肝硬変の薬は大きく分けて、肝臓を守る薬と、肝臓が障害されることによって起こる症状を改善する薬とがあります。

 肝臓を守る薬として代表的なのがウルソデオキシコール酸です。広く使用され、副作用も少ない薬です。ウルソデオキシコール酸は、もともと体内にある胆汁酸の構成成分で、胆汁酸の分泌を促し、脂肪の消化力を高める効果があります。

 肝臓が障害されることによって起こる症状で深刻なのが栄養障害で、腹水や肝性脳症にもつながります。肝臓の重要な働きの一つにタンパク質の合成がありますが、肝硬変の患者さんは、タンパク質とエネルギー不足を伴った低栄養の状態にあると考えられています。安静時でもエネルギー消費量が多いため、医療者と相談しながら夜食を摂取することで、朝の飢餓状態を予防し、元気に1日を過ごせるようになります。

 また、栄養障害の結果、バリン、ロイシン、イソロイシンといった分岐鎖(ぶんきさ)アミノ酸(BCAA)が不足してきます。BCAAは体内で合成することができないアミノ酸で、栄養代謝機能を改善する目的で、医薬品として処方もされています。

 BCAAは筋肉内で代謝され、肝臓で代謝することができなかった体内のアンモニアを解毒したり、肝臓のエネルギー源になったりもします。最近ではBCAAのさまざまな作用が明らかになってきており、糖代謝、脂質代謝、免疫の働きに良い影響があり、肝がんが発症しにくくなることも報告されています。肝臓に障害がない人でも、運動後などに摂取すると良いでしょう。

協力/群馬県薬剤師会