上州地鶏は、県畜産試験場が開発した、軍鶏(しゃも)の血を引く国内最高峰の国産地鶏。日本農林規格(JAS)の認定を受けるその品質は、豊かな環境と群馬特有の飼料で育ち、特別なおいしさがある。上州地鶏には、肝機能を高める効果があるとされる「タウリン」などの栄養成分が豊富に含まれている。

桐生大医療保健学部 栄養学科准教授  荒井   勝己さん

由来と飼料

 地鶏とは「日本の在来種の血を半分以上継いでいる鶏」と定義されています。日本の在来種は、明治時代までに国内で確認、または導入されて定着した38種の鶏と定められています。地鶏肉のJASでは、75日以上の飼育期間や28日齢以降は平飼いといった条件をクリアしたものを地鶏と呼びます。

 上州地鶏の特徴の一つとして、本県特産の「梅酢」と「桑の葉」を混ぜた飼料が挙げられます。本県のウメの生産量は、和歌山県に次いで全国2位です。抗酸化作用がある梅酢を与えることで、酸化による品質低下が抑えられ、色鮮やかでみずみずしい肉となります。桑の葉には糖分の吸収を抑える効果があり、鶏の腸内にいるビフィズス菌などの善玉菌を増やすことにつながり、健康的に飼育することが可能となります。

 栄養成分

 上州地鶏の肉に多く含まれる成分にタウリンがあります。生物の体内に存在するアミノ酸誘導体で、特に牡蠣(かき)やシジミなどの貝類、タコやイカなどの軟体動物に豊富に含まれています。上州地鶏のもも肉(赤身部分)を大量飼育用のブロイラーと比較すると約1.7倍含まれています。栄養ドリンク剤でタウリンは「元気が出る」とのイメージがありますが、特に肝機能を高める効果があることが知られています。肝臓で胆汁酸の分泌や肝細胞の再生の促進、アルコールや薬、体内でつくられたアンモニアなどを分解して無毒化し、体外に排出する解毒作用があります。タウリンの摂取は、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病の予防に有用であることが報告がされています。

コラム/「JAS」って何?
 JASとは「Japanese Agricultural Standard」の略称で「日本農林規格」を意味します。国内市場に出回る食品や農林水産品の品質、作り方を一定の水準にそろえるための基準で、クリアしたものは「農林物資の規格化等に関する法律」に基づいて品質を保証され、規格証票(JASマーク)をつけて出荷・販売ができます。

鶏肉八幡巻き

群馬大医学部附属病院 栄養管理部副部長 斉賀 桐子さん
 八幡巻きは、京都の郷土料理で、おせち料理にも最適です。使用するゴボウは、見た目から「細長く幸せが続きますように」との願いが込められています。鶏肉は必須アミノ酸のバランスが良く、ビタミンB群も豊富です。

◆材料(3人分)
鶏もも肉1枚320g、ゴボウ50g、ニンジン50g、インゲン25g、小麦粉10g、麺つゆ(2倍希釈)50cc、ポン酢25cc、みりん10cc
◆作り方
ゴボウとニンジンは1センチの棒状に切り、希釈した麺つゆで柔らかく煮て、インゲンはゆでる。
鶏もも肉は身の厚い部分に包丁目を入れ、肉の厚みを均一にして広げ、小麦粉を振りかける。鶏皮が外側になるように、ゴボウ、ニンジン、インゲンを巻き、タコ糸でとめる。
フライパンで表面を焼いて調味料を入れ、肉に火を通して煮汁をからめる。冷ましてからタコ糸を外す。煮汁と一緒にポリ袋などに入れて保管すると、味がより染み込む。

エネルギー767kcal/たんぱく質58.2g/脂質45.8g/炭水化物34.6g
  県畜産試験場が開発した「上州地鶏」は、日本農林規格(JAS)に基づく地鶏の認定を受けた国内最高峰の肉用鶏。奥深い味わいと弾力のある食感を楽しめ、心臓や肝臓の機能を高める効果があるとされるタウリンを豊富に含む。榛東村の「アクザワファーム」では、冬場の感染対策を徹底しながら、出荷を控えた上州地鶏を大切に育てている。

最高峰の鶏肉 味わって

 2019年に「新井養鶏」からアクザワファームと名を変え、代表となった阿久沢知樹さん(34)。祖父の代から続く養鶏業を引き継ぎ、鶏卵の販売などは家族に任せ、上州地鶏の飼育管理から出荷まで汗を流す日々を送っている。

上州地鶏を育てている鶏舎の前に集まる阿久沢さん(左)と家族

大型化に成功

 1989年、県畜産試験場が、当時「上州風雷鶏(ふうらいどり)」の名称で上州地鶏を開発。当初から父の倉一さん(70)が生産に乗り出していたが、肉の量が少なく、出荷量が徐々に低下。打開策として、同試験場が2015年に、日本固有のシャモの雄に国内で育種改良された雌を交配して大型化に成功し、新たな上州地鶏の生産が始まった。時を同じく、別の仕事をしていた阿久沢さんが「手伝いはしていたが、専業で働こう」と意を決して就農した。

霜降りでしなやか

 鶏舎3棟合わせて約900平方メートルの敷地に、日齢に分けて上州地鶏を飼育する。常時4、5千羽を育て、年間出荷羽数は1万5千羽に上る。2週間ごとに、同試験場でふ化したひなが、その日のうちに約1800羽運ばれる。「餌や水の場所が分からない子は、『ピーピー』と甲高く鳴く。聞き分けて1羽ずつ覚えさせる」と3日間付きっきりで面倒を見る。ひなは寒さに弱いため、夏場でもヒーターを付け、快適な温度の40度に保つ。飲み水が冷たいとおなかを壊すため、水温にも注意する。ある程度大きくなるまでは、ストレスを与えないよう、静かに横で観察する。

 飼育日数は、大量飼育用のブロイラー種は60日だが、上州地鶏は75~90日と長い。その分、タンパク質やタウリンといった栄養成分を豊富に含む。「上州地鶏は運動させているので、霜降りになりやすく、しなやかな肉質でみずみずしい」と太鼓判を押す。

 餌にもこだわる。県産の桑の葉と、榛名山麓の梅林から取れた梅酢のパウダーを使用。肉の赤身や旨味が増すという。

 冬場は特に、鳥インフルエンザに細心の注意を払う。消毒を徹底し、防護服を着て鶏舎を見回るほか、感染の原因となるネズミの進入を防ぐ対策を施す。

 「コロナ禍でも取引先の会社は買い続けてくれた」と感謝する。「多くの人に味わってもらえるよう、県内はもちろん、県外さらにはアジアにも販路を広げたい」と大きな夢を膨らませ、丹精して育て上げている。

メ モ
 上州地鶏の2020年度の出荷羽数は、過去最多の約2万6千羽。本年度の目標の3万7千羽に向け、順調に出荷が進む。上州地鶏を扱う指定店は、県ぐんまブランド推進課(027・226・3129)。