▼JR上越線敷島駅(渋川市赤城町)近くにある御前神社。ここで夏に行われる山車祭りを「猫祇園」と呼ぶ。線路の西を流れる利根川の河原を「猫っ河原」、滝は「猫っ滝」と言うそうだ

 ▼あちこちからニャーと聞こえてきそうな不思議な呼び名は「この辺りがかつて猫という大字だったから」と地名に詳しい金子ひろ子さん(84)に教わった

 ▼歴史は古く、1639(寛永16)年の検地水帳に「猫子村水帳」の記載がある。さらにさかのぼること戦国時代。神社の東の山に築かれていたのが白井城の支城「猫城」だ。地侍がふだん暮らすふもとを根小屋と呼び、読み方から猫の地名につながったと考えられている

 ▼明治生まれの金子さんの母は猫の生まれ。親戚は「猫んち」、大正の終わりに開業した敷島駅は「猫の停車場」と呼んだ。愛着のあった地名は昭和30年代初め、2村合併の際に消えた。「動物の名なんて恥ずかしい、という思いがあったのかも」と推し量る

 ▼当時を覚えている人は70歳以上となり、地元でさえその名を知らない人の方が多くなった。「今ならきっと話題になるのに、もったいない」と話すのは金子敦子さん(58)。義母ひろ子さんの地名研究を手伝い、奥深さを感じてきた

 ▼2年後の駅開業100年を前に敦子さんは今春、猫の地名を発信する活動を始めた。「地名は宝」。2人の思いが地域を巻き込み、人を呼び込む力になると面白い。