リンゴは、ナシやビワと同じ仁果(じんか)類に分類される果実で、バラ科リンゴ属の植物。原産地の中央アジアでは、4000年以上の栽培の歴史があるといわれている。国内では明治初めにアメリカから伝わり、本格的な栽培が始まった。現在、多くの品種が育てられているリンゴには、ペクチンといった便秘の改善が期待できる栄養成分が含まれている。

高崎健康福祉大農学部 生物生産学科准教授 熊倉 慧さん

栄養成分

 リンゴの特徴的な成分として、有機酸が挙げられます。リンゴに含まれる有機酸のほとんどはリンゴ酸で、疲労回復効果が期待されます。また、ゼリーやジャムの製造にも用いるペクチンも含まれます。ペクチンは、D-ガラクツロン酸を基本成分とした多糖で水溶性の食物繊維です。ペクチンやその分解物であるペクチンオリゴ糖には、整腸作用による便秘の改善も期待できます。

 リンゴにはポリフェノールが含まれ、その多くはプロシアニジン類です。ポリフェノールには、抗酸化作用が期待されます。これらは体内で生成された活性酸素を取り除きます。エネルギー源となる糖は、含有量が多い順にフルクトース、スクロース、グルコースが含まれ、無機質では、細胞内の浸透圧維持やナトリウムを排出する作用のあるカリウムを多く含みます。一方、ビタミン類は果実類の中では、少ない傾向にあります。

切り口の変色

 リンゴを切ったまま置いておくと、切り口が茶色く変色して見た目が悪くなってしまいます。これはリンゴ自体が持つポリフェノールオキシダーゼという酵素によるものです。この酵素が空気に触れて酸化することで変色が進みます。食塩水や酢、レモン汁などにつけると酵素の働きを抑え、防ぐことができます。

コラム/「蜜」は糖含む目印
おいしいリンゴの指標とされることのある「蜜」ですが、その正体は、ソルビトールと呼ばれる糖アルコールです。光合成により葉でつくられたデンプンがソルビトールとなって果実に送られ、さらに糖となって蓄積されます。この糖アルコール自体は、それほど強い甘味を示すものではありませんが、ソルビトールの蓄積が高い「蜜」の多い果実は、糖を十分に含んだ目印となります。
レシピ/リンゴのリゾット
群馬大医学部附属病院 栄養管理部副部長 斉賀 桐子さん
 リンゴの実と皮にたくさん含まれる食物繊維のペクチンは、加熱することで増えます。このリゾットは程よく甘みがあり、小さな子どもも喜んで食べられる一品です。
◆材料(1人分)
リンゴ30g、米50g、バター20g、玉ネギ(みじん切り)40g、(白ワイン15cc、ブイヨン200cc、ローリエ1枚…a)、パルメザンチーズ20g、パセリ少々
◆作り方
①水洗いしていないそのままの米と玉ネギをバターで炒め、米1粒1粒をオイルコーティングする。
②小鍋で温めたaを少しずつ注ぎながら、ふたをせずに30分かけ、米に粘り気がでない程度の硬さで炊く。
③リンゴは皮ごと細かく切って電子レンジで1分加熱。チーズと②に混ぜる。
④器に盛り、パセリのみじん切りをかける。
エネルギー441kcal/たんぱく質12.4g/脂質22.9g/炭水化物47.7g

 

 9月から11月にかけ、県内の観光農園で収穫が楽しめる「リンゴ」。秋の味覚のリンゴには、疲労回復や便秘改善が期待できる栄養成分が含まれる。県育成品種の一つ、早生(わせ)品種の「おぜの紅(くれない)」は、最も早い8月下旬に成熟する。沼田市の「真田りんご園」(木内修一園主)では、おぜの紅を皮切りに、丹精したリンゴの収穫作業が始まっている。

群馬の品種を 味わって

 長年、北毛地域で栽培される早生品種は、9月上旬から収穫できる青森県の品種「つがる」が主力だった。近年の温暖化の影響で着色不足が目立つようになり、新品種の開発が進められた。

 県農業技術センター中山間地園芸研究センター(沼田市)と農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所(盛岡市)が共同で開発したのが、おぜの紅。2009年に品種登録され、県内で一番早く食べられるリンゴが誕生した。

大玉で鮮やかな紅

 県内一の栽培面積を誇る沼田市のリンゴ農家の多くは、関越自動車道開通に伴い、約40年前に観光農園を始めた。真田りんご園もその時期に栽培・販売を開始。現在は、木内さん(52)と妻の淳子さん(50)、長男夫婦の雷斗さん(28)と志穂さん(28)、父の真之助さん(85)の家族5人で管理に当たる。

 3ヘクタールの栽培面積に、おぜの紅のほか、「陽光」や「紅鶴」、「スリムレッド」や「ぐんま名月」など県育成品種を中心に約50品種を栽培し、年間収穫量は約50トンに上る。

赤く色付き始めたリンゴ畑に集まる木内さん(左から2人目)家族

 おぜの紅を登録当初から栽培する木内さんは「大玉で名前の通り鮮やかな紅色。香りはさわやか、甘味と酸味のバランスと食感が良い」と評する。

凍霜害乗り越え順調に

 1~3月の真冬の剪定(せんてい)が、色付きや味を左右する重要な作業。葉が生い茂っても太陽の光が満遍なく実に当たるよう想像しながら、枝の向きや量を見極めて切り落とす。

 4月下旬から5月上旬にかけ、リンゴの花が5~6つ咲き、実らせたい大きな花を残し、ほかの不要な花を摘み取る。樹勢に応じて着果数(実にならせる数)を決めている。「今年は4月下旬の凍霜害で、本来実らせたい花が咲かなかったり落ちたりしたが、順調に育っている」と手応えは十分だ。

 色付きを良くするために、リンゴに張り付いた葉摘みや、リンゴの日陰部分を反転させて日に当てる「玉回し」、地面に反射シートを敷き、太陽光の照り返しを利用するなど、地道な作業で赤い実に仕上げている。

 「直接お客さんから『おいしい』と言ってもらえるのが一番の喜び。おぜの紅をはじめ、群馬生まれのリンゴのおいしさを多くの人に知ってもらいたい」と願い、リンゴ一筋にきょうも作業に汗を流す。

メモ
リンゴの主な県内産地は、沼田市、みなかみ町、渋川市。2020年産の栽培面積420ヘクタール、年間収穫量6850トンはともに関東1位で、全国8位。県内栽培面積のうち41%を占める県育成品種は「おぜの紅」をはじめ8品種。品種数は青森県、長野県に次いで全国3位。
*制作協力/群馬県農政部