脳血管の異常で引き起こされる脳卒中は、半身まひや失語などの症状が現れ、重症化すると命に関わる。1970年代ごろまで脳卒中の中で最も多かったのが「脳出血」。生活習慣の改善や、主な原因の高血圧を抑える薬の開発で罹患(りかん)数は大幅に減少したものの、90年代以降は下げ止まりで推移する。今号では、脳出血の原因や予防策をはじめ、血圧を下げる効果が期待できる栄養やそれを含む食材、効果的な運動方法を紹介する。

 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を総称して脳卒中と呼んでいます。厚生労働省によると、全国に111万5000人(2017年)の患者がおり、日本人の死因の疾患で、がん、心疾患に次いで多いです。現在は脳卒中のうち、脳梗塞が約6割、脳出血が約3割、くも膜下出血が約1割とされています。

 脳出血は、高血圧による血管の負担をはじめ、加齢や生活習慣による動脈硬化などで、もろくなった脳内の血管が破れて出血することで障害が起きる病気です。

前触れなく発症

 脳出血を起こすのは、大脳(被殻(ひかく)、視床、皮質下)、小脳、脳幹。大脳での出血が最も多く、被殻が約4割、視床約3割、最近は皮質下での発症が増えています。出血する場所や量によって現れる症状が変わります。

 初期症状はなく、前触れなく突然発症します。半身まひやろれつが回らない、聞いた言葉を理解できなかったり、言葉がすぐ出なかったりする失語症、めまいやふらつきなどの歩行障害、視野障害などを引き起こします。さらに重症化すると意識障害が起き、昏睡(こんすい)状態に陥ることもあります。

生活習慣の見直し

 脳出血の最大の原因は高血圧で発症の7、8割を占めます。50年ほど前までは塩分の取り過ぎや、味の濃い保存食を食べていた人が多く、高血圧の割合が高かったです。そうした食習慣が改善されて高血圧の人が減り、さらには血圧を下げるさまざまな薬が出てきました。

 発症リスクが抑えられたことで罹患数は格段に減り、ここ30年ほぼ横ばいですが、最近はわずかに増加傾向です。その要因として考えられているのが、高齢化に伴う抗血栓薬の内服やアミロイドβタンパク質の蓄積、慢性腎臓病の増加です。

 抗血栓薬は、血管が詰まる心筋梗塞や脳梗塞を予防するために血液をさらさらにしますが、一方で出血しやすくなるという側面もあります。また、アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっているとされるアミロイドβタンパク質は、加齢とともに脳内の血管に沈着することで血管が弱くなります。同様に血管が弱くなるのが慢性腎臓病で、糖尿病から合併して発症する患者さんが増えています。重症化して人工透析になると、血液を固まらなくする薬が必要となるため、脳出血のリスクが高まります。

 そのほかには、先天的な脳動静脈奇形やモヤモヤ病といったまれな病気が原因のこともあります。

 脳出血を含めた脳卒中の早期発見のために提唱されているのが「FAST」という標語です。Face(顔のまひ)、Arm(腕のまひ)、Speech(言葉の障害)、Time(発症時刻)で、症状に気付いたら発症時刻を確認してすぐに救急車を呼んでください。迅速な治療ができれば、その後の回復も期待できます。

 高血圧にならないために、塩分制限など食生活を改善し、血圧の管理を徹底することが最も重要な予防法です。長時間飲酒し続けると血圧を上げるため、アルコールは適量に、動脈硬化を促進する喫煙をやめ、肥満は高血圧のリスクを高めるため、日頃から適度な運動を心掛けてください。

 健康診断で高血圧が疑われる数値が出た場合は、生活習慣を見直した上で、医療機関を受診してください。また、酸素不足を補うために血圧が急激に上がる睡眠時無呼吸症候群は、脳卒中のリスクを高めるとされているため、しっかりと治療することを勧めます。

リハビリで自立へ

 脳出血を発症した場合、多くは点滴治療をします。緊急時には、手術で出血部分を取り除きます。開頭せずに、内視鏡で吸引する術式もあり、患者さんの体の負担が少なくなっています。

 後遺症が残る人は多いですが、歩行や食事、会話、着替えや排せつなど実践的なリハビリを行うことで、自立して社会復帰している人はたくさんいます。血圧の管理や生活習慣を見直し、発症したとしても諦めずに治療・リハビリをして機能回復に努めてください。

 

 暴飲暴食せず、血圧を抑えるために塩分控えめで野菜を多く取り、バランスの良い食事を心掛けています。休みの日は妻と一緒に30分ほどの散歩をして心身ともにリフレッシュ。院内では急用でない限りエレベーターを使わずに階段で上り下りし、月に2、3回は、病院近くの金山をハイキングして運動不足の解消に努めています。(矢尾板)


 

高血圧の治療薬
組み合わせて 相乗効果

 高血圧の治療は、「生活習慣の改善」と「降圧剤の内服」です。まずは食事・運動・飲酒・喫煙を見直し、必要に応じて適正体重を目指します。生活習慣を改善しても効果が見られない場合、血圧を下げる降圧剤の内服を始めます。高血圧の原因によって、すぐに降圧剤が必要なこともあるので、主治医の指示に従ってください。

 高血圧の治療薬は大別して、カルシウム拮抗(きっこう)薬、ACE阻害薬、α遮断薬、β遮断薬、ARB、利尿剤の6種類あります。効果が出るまでの期間は、薬の種類や量、組み合わせによって異なります。1種類でも血圧は下がりますが、組み合わせることで相乗効果が期待できます。体に負担がかからないよう、数カ月かけて血圧が下がるように調整します。

 患者さんの状態を観察し、生活習慣の再修正が必要か、薬の副作用がないか、薬が現在も最適かなどを確認します。降圧剤は飲み始めたらやめられなくなると思う方が多くいますが、生活習慣を改善し、血圧のコントロールができれば服用を中止することもあります。しかし、決して自己判断で服用をやめないでください。

 降圧剤のカルシウム拮抗薬は、グレープフルーツに含まれる物質(フラノクマリン類)と相性がよくありません。同時に飲むと薬の代謝が阻害され、薬が長く体内にとどまり、必要以上に強い効果が出てしまう可能性があります。一部の抗血小板薬や高脂血症治療薬でも同様の報告がされています。このような薬を使用する際には注意し、グレープフルーツが含まれたものを食べたい場合は、主治医や薬剤師に相談してください。

協力/群馬県薬剤師会