チンゲンサイは、キャベツやハクサイと同じアブラナ科アブラナ属の中国華南地方が原産地といわれる緑黄色野菜で、βカロテンやビタミンCなどを豊富に含む。日本に伝わったのは1972年の日中国交回復の頃で、多くの中国野菜の中でも味や食感が日本人の好みに合い、人気を得た。寒暖差に強く、生育が早いことから日本でも盛んに栽培されている。

桐生大医療保健学部 栄養学科准教授 荒井 勝己さん

栄養成分

 チンゲンサイは、βカロテンやビタミンCなどのビタミンのほか、カルシウムやカリウム、鉄などのミネラルを豊富に含んでいます。

 βカロテンは体内でビタミンAに変換され、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンの合成のほか、目や皮膚の粘膜の健康維持や抵抗力を強める効果があります。最近では、上皮細胞で発がん物質の効果を軽減するといわれています。

 ビタミンCは「アスコルビン酸」とも呼ばれる水溶性ビタミンの一つで、タンパク質であるコラーゲンをつくるために不可欠です。皮膚や粘膜の健康維持やシミの原因となるメラニン色素の生成を抑える働きがあります。さらに、鉄の吸収促進や抗酸化作用で動脈硬化や心疾患を予防、発がん抑制などの効果も期待できます。

 チンゲンサイには100グラム当たり100ミリグラムのカルシウムが含まれ、牛乳とほぼ同じ量です。体内のカルシウムは、99%が骨と歯に、残り1%が体液や筋肉などの組織に存在します。この1%のカルシウムが出血時の血液凝固や神経の働き、筋肉運動など生命の維持や活動に重要な役割を担っています。そのため、カルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出し、骨が脆(もろ)くなります。

産地と選び方

 露地では秋から冬が旬とされていますが、生育期間が40~50日と短いことや気温の変化に比較的強く、ハウス栽培の活用で1年中市場に出回っています。2019年度の農林水産省の統計によると、国内での収穫量は茨城県が最も多く1万1600トン、次いで静岡県7520トン、愛知県2780トンと続き、本県は全国第5位で1840トン収穫しています。

 根元にかけて丸みがあり、葉柄(ようへい)(茎)の幅が広く肉厚で、きれいな淡緑色だと甘みがあります。さらに葉は濃緑色で厚みがあり、みずみずしいものを選ぶと良いです。

コラム/「パクチョイ」って何?
 スーパーなどでチンゲンサイによく似た「パクチョイ」と呼ばれる野菜が売られています。日本に伝わった当初、チンゲンサイの仲間はさまざまな名前で呼ばれていました。そこで農林水産省は、葉柄が青色(緑色)のものをチンゲンサイ(青梗菜)、白色のものをパクチョイ(白菜)と定め、現在では定着しています。
レシピ/チンゲンサイの生春巻き
群馬大医学部附属病院 栄養管理部副部長 斉賀 桐子さん
 チンゲンサイはアクが少なく下ゆでしないので、ビタミンCの損失が少ない。油や脂質を多く含むアボカドと食べるとビタミンAの消化吸収がいいです。カットの大きさやタレはお好みで。
◆材料(1人分)
チンゲンサイ1株、ライスペーパー1枚、エビ2尾、アボカド1/4個、パプリカ1/6個、長ネギ少々
◆作り方
①チンゲンサイは軸を外して電子レンジで1~2分加熱。緑の葉と白い茎で切り分ける。白い茎とアボカドとパプリカは細切りにする。
②ぬるま湯で戻したライスペーパーに葉を広げて敷き、他の具材をのせて、手前と左右を折ってからくるくると巻くようにして包む。
③タレは醤油(しょうゆ)小さじ1、米酢同2、砂糖同1、豆板醤(とうばんじゃん)少々合わせる。長ネギは縦に細く切り、少量の油で揚げる。
④②を一口大に切り、③と盛り付ける。
エネルギー248.8kcal/たんぱく質7.8g/脂質10.9g/ビタミンC65.9g

 

 くせのない味わいで、中華をはじめ、和食や洋食までさまざまな料理を彩る「チンゲンサイ」。使い勝手がいいだけでなく、ビタミンCを豊富に含むなど健康維持に欠かせない野菜だが、県内の出荷量は減少の一途。ただ、主な産地の一つ、高崎市ではJAたかさきの子会社「JAファームたかさき」が生産に力を入れる。産地復活を目指す取り組みが動き始めている。

産地復活へ 研究重ねる

 同ファームは、地域農業の活性化を目指し、2011年に設立。担い手の育成や野菜の作付けの研修などを行っているほか、育成したネギやブロッコリーの苗を農家に供給、作付面積の拡大に取り組む。

 昭和から平成に変わる頃、JAたかさき管内は、当時珍しかった中国野菜のチンゲンサイの生産拡大を進め、右肩上がりに売り上げを伸ばしていた。しかし、農家の高齢化や14年の大雪によるハウス倒壊を機に、出荷量が激減。2020年度の管内の年間売り上げの見込みは約4700万円で、15年ほど前と比べて5分の1程度に落ち込んだ。

再び売り出す

 管内全体で再びチンゲンサイを売り出そうと、営農支援を担う同ファームが先陣を切って取り組む。今年2月までの年間出荷量は、前年対比の2.5倍の9トンにまで増えた。昨年4月にJAたかさきから同ファームに出向した有須博俊さん(42)は「知識はあったが、実際にやるのは大違い。農家の先輩方に栽培方法を聞いて回っている」と研究を重ねる。

収穫したチンゲンサイを手にする有須さん

 同ファームが所有する8棟のハウスのうち4棟でチンゲンサイを栽培し、職員3人とパート2人が管理や収穫に汗を流す。水やりと温度管理、ナメクジに葉を食べられないようにすることに注意を払う。「花が咲いたり、葉が黄色くなったりすると商品にならない」と出荷時期を見極める。いすに座り、一つ一つ丁寧に抜き取り、根をはさみで切り取り、1日180キロ(60箱)、4日がかりで収穫する。

給食にも提供

 夏場を除き年間5、6回収穫できる。同ファームで育てる品種は6種類。見た目や色味、味わいは大きく変わらないが、種をまく時期が異なる。収穫までの期間は55~90日。2月中旬までに種をまいた「冬御前」や「冬賞味」はこの時期に収穫する。

 農薬や化学肥料の使用を通常の5割以下に抑えて栽培する「高崎市特別栽培農産物」に認証され、スーパーのほか市内の小中学校の給食にも提供する。

 有須さんは「出来栄えはまだまだ。植えたものは全て出荷できるようにし、安全安心なチンゲンサイを届けたい」とさらなる品質向上を目指す。

メモ
 県内のチンゲンサイの主な産地は、前橋市、高崎市、渋川市。2019年度の作付面積144ヘクタールは全国3位、年間出荷量1630トンは全国6位。自宅でも栽培でき、春か秋に種をまくと育てやすい。水やりと虫よけがポイント。