▼進学のため長男が今月、都内で1人暮らしを始めた。「泥だらけのユニホームの洗い方を教えて」「自炊してみた」。質問やら報告やらで、三日にあげず電話をかけてくる。強がっていても新生活の心細さがあるのだろうと、気が済むまで付き合うようにしている

 ▼進学や就職などで古里への思いを強くする人が増える季節だろう。だが、やむにやまれず古里を離れた人の望郷の念となると、その深さは計り知れない。ロシアの侵攻を受けるウクライナの避難民である

 ▼前橋市の知人宅に身を寄せるコハノスカ・オレシャさん(30)は首都キーウ(キエフ)を逃れた。不条理な暴力を憎み、母国や欧州各国に散りぢりとなった身内や知人を案じる

 ▼日本語学校を運営する学校法人ニッポンアカデミー(同市)の支援を受け、日本語を学ぶ。市は、市民や企業の寄付金を財源に一時金や生活費を支給する仕組みを設け、避難生活や自立を後押しする。大学など民間にも支援の動きが広がる

 ▼祖国でグラフィックデザイナーとして活躍していたコハノスカさん。企業のロゴなどを制作していたと、スマホに残る色彩豊かなデザインを見せてくれた

 ▼日本語を覚えたら「日本でデザイナーをしたい」と新たな夢を描く。ただ、その陰には「しばらくはウクライナに帰れないだろうから」との非情な現実がある。古里に笑顔で戻れる日まで、善意の輪で支えたい。