慎二郎さんの写真を見つめ、思いをはせる内野さん=7月17日、川崎市

 「パパ、家族みんな元気でいるよ。安心してって伝えたくて」。父の南慎二郎さん=当時(54)=を亡くした内野理佐子さん(61)=川崎市=は墜落事故現場となった「御巣鷹の尾根」に登り続ける理由を語る。

 悲劇を思い返すのがつらくて慰霊登山を見送る時期もあったが、2004年からは毎年8月12日に家族と山道を進み、墓標に近況を報告する。

 父は出張のために事故機に搭乗した。当日の朝、理佐子さんは「行ってらっしゃい」と見送り、それが最後の別れとなった。

 事故から4カ月後に夫の志郎さん(65)との結婚式を控え、父は事前にピンク色のドレスを贈ってくれていた。悲しみのさなかだったが、晴れ姿を心待ちにしていた父に思いをはせ、予定通りに式を挙行。招待状には父の名前も記した。

 事故翌年の1986年末に長女の真里香さんが誕生し、87年9月に初孫を見せようと初めて尾根を登山。97年8月には、8歳になった長男の慎一さんを連れて訪れた。

 名前の1文字を受け継ぐ慎一さんは、登った感想や亡き祖父への思いなどを日記に記した。これを機に、理佐子さんは事故を伝えていこうという気持ちが強まり、最愛の父への思いをつづった詩「天国のパパへ」や事故の概要などをインターネット上で発信する活動を始めた。だが、「(父との)大切な思い出だけを見つめていたくて、悲しみが残る山を直視したくなかった」と、尾根から足が遠のいた。

 心境変化のきっかけは2004年、...