栄養価が高く血行促進やLDL‐コレステロール値を下げるなど、さまざまな効能が知られているタマネギ。県内では前橋や高崎、富岡などの中・西部地域を中心に栽培されている。煮物、炒め物、揚げ物の各種料理に加え、サラダにも適しており、利用範囲は非常に幅広い。生だと辛味が気になる人でも、加熱すると甘味が感じられるので食べやすい。好みの調理法でぜひタマネギを食卓に。

タマネギ畑で生育状況をチェックする奈良さん(手前)

 赤城山の南面に広がるタマネギ畑。収穫を間近に控え、青々とした葉が辺り一面を覆っている。遠く赤城の雄姿を背になだらかな斜面に立つと、はるか眼下に市街地の家並みがかすんで見える。

 「眺めはいいけど、風が強いので冬の作業は大変です」と奈良さん。2haの畑で年間約100tのタマネギを生産している。

 冷涼な気候を好むタマネギは、寒さには強いが暑さに弱い。そこで、夏場を避け、9月に種をまいて11月に苗を定植、翌年の5~6月に収穫している。冬の空っ風による乾燥を防ぎ、地温を上げるため、ビニールマルチを張って大切に育てている。栽培品種は、中生種の「アドバンス」と加工用の「ターボ」の2種類。「契約栽培の加工用が8割を占めています」と奈良さん。

直売所「風ラインふじみ」に並ぶタマネギ

祖父母を頼り脱サラ

 脱サラ組の奈良さんが就農したのは7年前。それまで金融関係の会社に勤めていたが、勤務地の茨城県で東日本大震災に遭遇。ライフラインが止まり、激しい地割れを目の当たりにして、価値観が大きく変わったという。

 「人はいつ死ぬか分からない。生きるために必要なものを自分の手で生産し、社会に貢献したい」と考え、農業に目を向けるようになった。長く農業に携わってきた祖父に相談し、快諾を得て、祖父母と一緒にコメや野菜作りに取り組み始めた。

 タマネギを主力品目に選んだのは、栽培に機械を導入しやすいこと、常に一定の需要があり安定収入が得られやすいことなどが理由。重量野菜のため収穫や出荷作業に体力を要するが、「若いうちなら苦になりません」と奈良さんは笑い飛ばす。

 収穫後は加工用に出荷するほか、地元の農産物直売所「風ラインふじみ」やスーパーの地場産コーナーに並べている。

土作りや苗作りに工夫

 品質に優れたタマネギ作りのポイントは、土作りと苗作り、さらに定植後の管理にあるという。「丈夫な苗を作るために、品種の特性を理解し、それに合った肥料を選ぶ必要があります」と話す。また、温暖化による気候の変化が著しいため、病害虫駆除のタイミングを逃さないことも重要で、生育状況のチェックなど日ごろの管理を怠れない。「露地栽培の収量は、天候によって大きく左右されます。天気予報には常に気を配っています」

 タマネギのほか、夏はトウモロコシ、冬はブロッコリーやカリフラワーなどの野菜栽培と、コメ作りを行っている。「祖父母と3人でやっていましたが、2年前から弟が手伝うようになって、少し楽になりました」と奈良さん。最近は弟を中心に、話題の「ビザールプランツ」(珍奇植物)を実験栽培しており、「販売できるようにしたい」と夢を広げる

由来

タマネギは、中央アジアが原産とされるユリ科の植物で、栽培の歴史はきわめて古く、エジプトではピラミッド建設の労働者が食用としていたという記録があります。現在は、世界各国に広まり、日本で食用として栽培されるようになったのは意外に遅く、明治時代に入ってからです。タマネギの食用部分は鱗茎りんけいとよばれる地下茎の一種で、短い茎のまわりに、養分を蓄えた多肉質の葉が密生し、球形や卵形などになったものです。

 一年を通じて売られている茶色い皮で覆われたタマネギは「黄玉ねぎ」という品種で、全国で栽培され、収穫後、貯蔵、乾燥させてから出荷します。タマネギの本来の旬は秋ですが、収穫量の多い北海道では2~3月に種をまき、9~10月にかけて収穫され、佐賀県など九州では4~6月初旬にかけて収穫されて5~9月頃まで出荷されます。新タマネギ(早生タマネギ)は、収穫後、貯蔵せずに出荷されるタマネギで、北海道のタマネギの在庫がなくなり、佐賀県産の出荷が始まる前の4~7月頃に収穫し、そのまま出荷します。水分が多く、辛みも少ないので生でも食べやすいのが特徴です。

特徴的な成分

 タマネギを刻んだとき目にしみたり、食べると辛いと感じるのは硫化アリル(アリシン)が原因です。アリシンは血液が固まるのを抑制する作用が知られており、高血圧や動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの予防に効果的です。他にも抗菌・静菌作用や解毒作用などの機能性についても注目されています。また、アリシンは豚肉に多く含まれることで知られているビタミンB1(チアミン)と結びつくとアリチアミンという物質になり、ビタミンB1の吸収を助ける働きもあります。しかし、アリシンは水溶性の成分のため水に晒すと溶け出し、さらに熱に弱い性質を持つため調理する際は注意が必要です。

 タマネギにはポリフェノールの一種であるケルセチンが含まれています。ケルセチンはポリフェノールの中でも特に強い抗酸化作用を示し、細胞老化抑制や活性酸素の除去に効果があり、血圧上昇抑制やアレルギーの緩和などにも効果があるといわれています。また最近の研究では、血糖値の低下作用や認知機能改善効果なども報告されています。

コラム/犬にタマネギはNG
 タマネギをはじめとするネギ類(長ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなど)には“アリルプロピルジスルフィド”というネギ類独特の匂いの元となる有機チオ硫黄化合物が含まれています。この化合物を消化する酵素を犬は持っていないため、食べてしまうと貧血などの中毒症状を起こします。犬の体内にこれらの中毒物質が入ると、赤血球のヘモグロビンが酸化し、赤血球が壊れることで溶血性貧血を引き起こします。体重1kg当たり5~10g以上タマネギを摂取すると注意が必要です。もしネギ科の植物を摂取した場合は、症状が出る前にまず動物病院に相談しましょう。
オーブン焼き
エネルギー94kcal/たんぱく質5.0g/脂質3.9g/塩分相当量0.6g
◆材料(1人分)
タマネギ半分、ピザソース大さじ1、ベーコン10g、チーズ1枚、コショウ・適宜
◆作り方
①タマネギを半分に切り、トースターで焼く
②ピザソースを塗り、ベーコンとチーズをのせ、チーズが溶けるまで焼く
③皿に盛り、コショウをふる
※加熱にも強いケルセチン
春野菜サラダ
エネルギー108kcal/たんぱく質1.6g/脂質8.1g/塩分相当量1.7g
◆材料(1人分)
新タマネギ30g、春キャベツ40g、サヤエンドウ5g、ミニトマト1個、ベビーリーフ5g、しょうゆ小さじ1、オリーブ油・酢各小さじ2、柚子コショウ小さじ半分
◆作り方
①タマネギは薄切り、キャベツは手でちぎる。
②サヤエンドウはサッとゆで半分、トマトは4つに切る。
③調味料を混ぜ合わせ、野菜にかける。
※水にさらさず生食でアリシン摂取