家庭の食卓に人気のトマト。赤、黄、オレンジと彩りが豊かで、野菜サラダに欠かせない一品になっている。ハウス栽培の普及で一年中店頭に並ぶようになり、季節を問わず新鮮なものが味わえるのもうれしい。近年は果物のような甘さが魅力のフルーツトマトが注目され、全国各地で栽培されるようになった。県東部で生産されている「ブリックスナイン」は、その先駆け的な存在だ。

 野菜嫌いの子どもにも人気の甘くておいしいフルーツトマト。県東部の太田、館林地域で生産されている「ブリックスナイン」は、本県自慢の老舗ブランドだ。ブリックスは糖度、ナインは数字の9で、「糖度9度以上」を意味する。一般的なトマトに比べて、糖度は実に2倍以上もある。

 「ブリックスナインの魅力は甘みだけでなく、酸味も残っていてコクがあり、食べ応えがあります」と小暮さん。本格的な出荷時期を迎えハウス内での収穫作業にも力が入る。

 栽培面積は1.25haで、毎年約70tを生産しており、JAにったみどり管内で最大規模を誇る。大きく育ったトマトの苗には、赤みを帯びた大小の実がびっしり。技能実習生とパート従業員合わせて14人の力を借りて、出荷作業は6月まで続く。

ブリックスナインを手にする会員たち

水分抑え糖度高める

 県内で高糖度のフルーツトマトが作られ始めたのは30年前。いち早く栽培に着手した父親の後継者として、東京農大を卒業後に就農した小暮さんは「トマトが盛んな土地ではなかったので、思い切って従来と違ったトマト栽培にチャレンジできたのではないか」と思いを巡らす。

 栽培に使用している品種は、特別なものではなく一般的な大玉トマトの「ソプラノ」。水分を与えないと実が甘くなるというトマトの性質を利用して、水分を極力抑えて完熟させ、糖度を高めるよう努めている。

 「選りすぐりの肥料と灌かん水のコントロールが、おいしいフルーツトマトを作る一番のポイントです」と小暮さん。栽培にあたっては、県園芸試験場(現農業技術センター)が開発した遮根透水シートによる「根域制限栽培」という技術を採用している。「土中にシートを埋設することで、根の伸長を抑え、水の吸収をうまく調整することができます」

県を代表する名産品に

 収穫したトマトは、すべてJAにったみどりの野菜集配センターへ運び、糖度が9度以上であることを確認した上で、ブリックスナインとして首都圏の市場や県内のスーパー、JA直売所などに出荷している。

 親世代が栽培を始めたころは、5軒の農家でスタートしたが、現在は11軒に増え、栽培面積は合わせて4.5ha、年間の出荷量は約240tに上る。同JAブリックスナイン研究会の代表を務める小暮さんは「互いに切磋琢磨せっさたくまして、質の高いトマト作りを目指しています」と話す。

 栽培中は各会員のハウスを巡回して、品質確認や技術面での情報交換を行ったり、食味会を開いたりして味の統一性や安全性の向上を図っている。「群馬を代表する名産品にしたい」と会員たち。コロナ禍の中、「食べた人が笑顔になってくれれば」と口をそろえる。


 

日本における歩み

 トマトは、南アメリカ原産の植物で、17世紀にヨーロッパを経由して、アジアに入り、日本に伝わってきたことが知られています。当時は、主に鑑賞用として栽培されていました。日本において、トマトが食用とされたのは幕末から明治に入ってからです。昭和に入るとその消費量は増加し、栽培面積の上昇とともに、一時期は100万tものトマトが生産されていました。現在でも70~80万tが生産されています。

成分

 トマトの成分に着目すると、アミノ酸ではうまみ成分であるグルタミン酸を多く含んでいます。ミネラルについて見てみると、カリウムやリンを多く含みます。カリウムは、細胞の浸透圧や活性の維持を担っており、リンは、カルシウムとともに骨の主要構成要素であり、生体におけるエネルギー代謝にも関わっています。脂肪酸では、人の体内で合成することのできない必須脂肪酸であるリノール酸が多く含まれます。必須脂肪酸が不足すると発育不全、皮膚の角質化などが生じることが知られています。また、熟したトマトの特徴的な成分としては、赤色色素であるリコピンや同じカロテノイド色素であるβ-カロテンが知られています。カロテノイド色素は抗酸化作用を示すことが報告されています。抗酸化作用により悪玉コレステロールの酸化が抑えられることで、活性酸素から体を守り、生活習慣病予防の効果が期待されます。リコピンやβ-カロテンは脂溶性であることから、油と一緒に食すことでよく吸収され、熱にも強く加工品でもその効果が期待できます。

 トマトは古くから、リコピンやβ‐カロテンの健康効果は注目されていましたが、新たに肥満に伴う脂質代謝異常の改善に有効な機能性成分も報告されています。

フルーツトマト

 近年よく耳にするフルーツトマトとはどういったトマトでしょう。フルーツトマトとは、栽培方法によりトマトを完熟させ、糖度を高めたもので、フルーツトマトという特定の品種を示すものではありません。一般的なトマトの糖度は4~5度ですが、フルーツトマトは糖度が10度以上のものもあります。重量感のある中身が詰まっているトマトは比較的甘いトマトが多いようです。

豆知識/「ケチャップ」って?
 日本ではトマトケチャップが有名ですが、ケチャップとはそもそもなんでしょう。その語源は、中国の魚醤に由来するという説が有力です。これがアジアからヨーロッパに伝わり、キノコなどを原料として作られるようになります。そして、アメリカへ渡ったヨーロッパ人によって、トマトで作られるようになります。そうしてアメリカから日本へトマトケチャップとして入ってきました。
トマトスープ
エネルギー 43kcal / たんぱく質 0.9g / 脂質 2.1g / 塩分相当量 0.7g
材料(1人分)
トマト120g、オリーブ油小さじ半分、パセリ適宜、コンソメ・塩・コショウ少々
作り方
①トマトはざく切りにし、ミキサーにかける
②鍋に移し、塩・コンソメを加え温める
③器に盛り、トマト・パセリ・オリーブ油・コショウをふる
串焼き
エネルギー 170kcal / たんぱく質 14.9g / 脂質 9.3g / 塩分相当量 0.9g
材料(1人分)
トマト100g、豚肉60g、塩・コショウ・カレー粉少々、芽キャベツ1個、サラダ油適宜
作り方
①トマトは一口大、芽キャベツは半分に切る
②トマトは一口大、芽キャベツは半分に切る
③材料を串にさし、油を敷いたフライパンで両面焼く