店主の長谷川さん(左)と園児の寄せ書きを手にする幸子さん

 地域住民らに親しまれてきた群馬県高崎市吉井町の長谷川豆腐店が、30日の製造を最後に閉店する。店主の長谷川義昭さん(74)が気力と体力の限界と判断、1909(明治42)年から続く老舗の歴史に幕を下ろす。長年のファンからは消えゆく「なじみの味」を惜しむ声が上がっている。

 同店の豆腐は完全手作りで、機械では出せない滑らかな食感が特長。長谷川さんは「大豆を水に漬ける時間や、にがりを入れるタイミングなど、手作りの方がきめ細かに調整できる」と話す。

 最盛期には、前の晩から仕込み、木綿や絹ごし、油揚げなど1日2000丁近くを作っていた。現在は絹ごしをやめ、1日300丁ほどになったが、それでも午前3時半ごろから作業しなければ間に合わない。

 水の入った重いおけを持ち上げることが多く、腰が曲がってしまった。「創業した祖父や父も腰が曲がっていた。手作りの宿命。もう潮時かな」と、閉店を決断した。

 同店のファンで、近所の主婦(48)は「大豆の香りが口に広がり、他とはひと味違っていた。もう食べられなくなるのが残念」と惜しむ。

 主な卸し先は吉井物産センター「ふれあいの里」。他に、熱心な店舗が購入したり、妻の幸子さん(74)が数カ所に配達したりしている。「配達先の保育園で、園児が『おいしいおとうふありがとう』などと寄せ書きをしてくれた」と夫婦はうれしそうだ。

 20歳から豆腐を作り続けて半世紀以上、長谷川さんは「これだけ頑張ったから、祖父も父も『よくやった』と言ってくれるかな」と振り返った。