愛らしい色と形に加え、みずみずしい甘味と香りが魅力的なフルーツの「モモ」。本県は高崎地域を中心に栽培が盛んで、6月に始まった収穫作業は早生種・中生種・晩生種の順に8月まで3カ月間続く。モモは腸の調子を整えてくれるペクチンや老化防止に役立つビタミンE、過剰な塩分を排出するカリウムなどを豊富に含んでいる。食後のデザートなどにぜひ旬の味を楽しんでほしい。

 高崎市西部の剣崎・八幡地区は、かつて「桃源郷」と呼ばれ、農家が栽培するたくさんのモモの木が小高い山の斜面を覆っていた。開発が進む中でモモの木は伐採され、風景は一変したが、今でも多くの農家が農園を守り、栽培を続けている。

 須田さんもその1人。経営する85aの農園には、若木から老木まで約200本のモモの木が植栽され、毎年5t余りのモモを収穫。主に直売所で販売し、残りは顧客に宅配便で送ったりJAなどに出荷したりしている。

 栽培品種は早生種から晩生種まで十数種類に及ぶ。6月から3カ月にわたる収穫時期が1年で最も忙しく、妻の直子さん(59)、長男の修一さん(32)と力を合わせ作業をこなす。「甘くておいしいモモを多くの人に食べてもらいたい」と、須田さんは力を込める。

高崎ブランドの「ミルキームーン」。月のような黄色が特徴

自慢の「ミルキームーン」

 会社勤めをしていた須田さんが、早期退職をして家業のモモ栽培を継いだのは40歳のとき。農園を始めたのは、5年前に亡くなった父親の幸雄さんで、とても研究熱心な人だった。「南国フルーツの王様マンゴーに勝るモモをつくりたい」と、十数年かけて新品種の開発に取り組み、1997年に「平成ゴールド」として品種登録した。

 そんな父親の情熱に感化された須田さんは、農園作業の傍ら、家宝ともいうべき「平成ゴールド」に少しずつ改良を重ねた。そして、3年前に高崎市ブランド商品として発売したのが「ミルキームーン」だ。香り、色合い、形状などにおいて厳選し、平均糖度も14.5度以上というプレミアム品で、「月の女神」をイメージして名付けたという。

 「気品のある芳醇な香りと、きめ細やかな食感、究極の甘味が特徴です。7月末から収穫できるのでぜひ味わってみてください」

6次産業化担う3代目

 モモの栽培は「30年やって一人前」と言われるほど難しく、奥が深い。せん定や摘蕾・摘果、袋掛けなど、経験でしか身につかない技術が求められるからだ。

 「私はまだ半人前」と謙そんする須田さんは、農園でさまざまな試みを実践している。その1つが「叢生そうせい栽培」。木の根元に草を生やし、有機肥料を使って自然に近い状態で栽培する。「モモの甘さが余計に増した気がします」。収穫前の数日間、根元の周囲に反射シートを敷くのは、日の当たりにくい実の下方を赤く色付けするための工夫だ。

 今秋、農園の一角に加工設備を備えた直売所をオープンする。専門学校を卒業後、モモ栽培を手伝う修一さんは、次代を担う3代目として、6次産業化の中心的な役割を担う。「枝からもぎたてのモモを使い、スムージーやシャーベットなどを作り、農園を訪れた人に提供したい」と夢を広げている。

元気な暮らしに役立つ栄養のお話/NPO法人ヘルス・コミュニケーションズ理事長 笠原 賀子

由来

 モモは中国原産で、バラ科モモ属の木になる果実です。仙果と言われ、世界三大美女の一人、楊貴妃もその味と効用に魅せられたとか。日本では縄文時代の種が見つかっています。しかし、食用として本格的な栽培が始まったのは明治以降で、岡山県の「白桃」が「日本のモモの元祖」と言われています。

品種と収穫量

 令和元年産のモモの収穫量は、107,900t(農林水産省)で、山梨県、福島県、長野県の3県で全国の約6割を占めています。モモの品種は非常に多く、果肉が白い白桃系と黄色の黄桃系に分けられます。また、収穫時期により早生種・中生種・晩生種の3種があり、旬の6月~9月頃まで、次々と出回ります。

栄養成分

 古来、不老長寿の果物と言われたモモには、さまざまな栄養成分が含まれています。その主成分は果糖で、体内ですぐに利用されるエネルギー源として疲労回復に即効性があります。ビタミン類も多く含まれていますが、ビタミンB群のうち、最も多く含まれる成分はナイアシンです。エネルギーを産生する際に必要な酵素の働きを助けます。ビタミンCは疲労を回復したり、免疫力を向上させます。抗酸化作用の強いビタミンEは、「若返りのビタミン」とも言われ、同じ抗酸化作用のあるビタミンA(ニンジン、ホウレン草など)やビタミンC(ミカン、キウイフルーツなど)を一緒に摂取すると、相乗効果により免疫力がアップします。

 また、果物の中でもカリウムが多く、体内の過剰な塩分を排泄し、高血圧を予防します。長時間の運動による筋肉のけいれんなども緩和します。さらに、ペクチンは整腸作用のある水溶性の食物繊維で、便秘を予防します。

 そのほか、お茶にも含まれているカテキンも多く、動脈硬化や心臓病、糖尿病を予防する効果があります。これからの季節、モモの酸味は食欲をまし夏バテ防止に役立ちます。

選び方

 モモは、鮮やかな紅色で白い斑点の現れているものがおいしい証拠です。縦に伸びる縫合線が左右対称で、甘い香りが立っているものを選びましょう。新鮮なモモは皮付きのまま食しても、おいしいです。

 

豆知識/厄除けパワー
 子どもの頃聞いた、昔話「桃太郎」。覚えていらっしゃいますか。モモは、イザナギの神が、黄泉の国(死者の世界)から地上へ逃げ帰ってくる際、追ってくる魔物に黄泉の境に生えていたモモを投げつけ、難を振り切ったと「古事記」には書かれています。ここから「モモ=邪鬼を払う」となり、鬼を退治するヒーロー「桃太郎」の誕生につながったと言われています。
冷製スープ
エネルギー186kcal/たんぱく質4.8g/脂質9.5g/塩分相当量1.1g
材料(1人分)
皮付きモモ半分、ジャガイモ半分、タマネギ20g、牛乳80cc、コンソメスープ40cc、生クリーム大さじ1、塩・コショウ各少々
作り方
①薄切りにしたタマネギとジャガイモをコンソメスープで柔らかく煮て粗熱を取る
②①に牛乳を加えミキサーにかけ、次に洗った皮付きモモも加え、ミキサーにかける
③塩・コショウで味を調え、冷蔵庫で冷やし、最後に生クリームを加える
コンポートゼリー
エネルギー75kcal/たんぱく質2.7g/脂質 0.2g/塩分相当量0g
材料(1人分)
皮付きモモ半分、レモン汁小さじ半分、水150ml、砂糖大さじ1、ゼラチン小さじ半分
作り方
①分量の半分の水・砂糖・レモン汁、よく洗って切ったモモを耐熱容器に入れ、ラップをしてレンジに2分かける
②具材を取り出し、ゼラチンを少しずつ加え、溶けたら残りの水を加える
③モモと一緒に容器に入れ、冷蔵庫で冷やし固める