▼キンモクセイの甘い香りに気づき、先月も咲いていたことを思い出した。不思議に思って調べてみると、「二度咲き」。地球温暖化や気温の急激な変化が原因とみられるが、メカニズムは解明されていないという

 ▼秋とは思えない陽気がようやく去り、県境の山々から雪の便りが届いた。ことしは遅れている紅葉も少しずつ山裾へと歩みを進めていることだろう

 ▼安中市松井田町の碓氷湖を訪ねたら〈秋の夕日に照る山紅葉/濃いも薄いも数ある中に〉と始まる唱歌「紅葉」の石碑があった。作詞したのは長野県出身で東京音楽学校(現東京芸大音楽学部)教授の高野辰之。碓氷峠が歌の舞台とされ、故郷と東京を往復するために利用した信越本線熊ノ平駅の近くで見た紅葉に着想を得たらしい

 ▼熊ノ平駅は横川と軽井沢の中間にあり、山とトンネルに挟まれていた。当時はアプト式軌道が引かれ、列車はゆっくり峠を越えた。乗客は美しい紅葉を心ゆくまで楽しめただろう

 ▼高野は唱歌を数多く手掛けている。〈兎(うさぎ)追いしかの山/小鮒釣りしかの川〉と望郷の思いを歌う「ふるさと」。春の喜びを軽快なリズムに乗せた「春が来た」。菜の花が咲く田園風景をゆったりとした調べに乗せた「朧(おぼろ)月夜」。どの歌も日本人の心に響く

 ▼碓氷峠の紅葉は一部で始まったばかりで、見ごろはまだ先になりそう。〈水の上にも織る錦〉と詠まれた景色が楽しみだ。