ラグビートップリーグのパナソニックワイルドナイツが埼玉県熊谷市に本拠地を移転して半年以上が経過する中、群馬県太田市龍舞町にある旧練習拠点(施設所有・三洋電機)の活用方針が決まらず、関係者が苦慮している。用途制限の厳しい市街化調整区域に立地し、売却価格の見積もりも高額で買い手が付きにくいとみられ、広大な敷地と建物がほぼ未使用の状態が続く。水面下で同社側と市側の交渉があったとされるが、大きな進展はなく、有効活用に向けた道筋は不透明だ。

 かつての練習拠点は1996年、旧JA休泊が資産活用事業の一環で整備した後、同社に売却された。本拠地は2021年8月に移転。チーム名は埼玉パナソニックワイルドナイツになった。約4万平方メートルの敷地内に天然芝のラグビー場2面と、2階建てのクラブハウスが残っている。チームの練習や、子ども向けラグビー教室の会場として20年以上活用されてきた。

 19年2月にチームが本拠地移転を発表して以降、同社は施設の扱いに関して一貫して「何も決まっていない」と説明。今後の方針は明らかになっていないが、ある関係者は「施設を手放すつもりで、当初は売却価格を十数億円に設定していた」とする。

 売却先が決まらないのは、①施設の購入・整備に億単位の投資が必要②建築制限の厳しい市街化調整区域に立地するため、開発が難しい③年間1000万円以上の維持管理費がかかる―といったことがネックになっているとみられる。

 施設の廃止を危惧する県ラグビーフットボール協会はこれまでに、関連団体と連名で存続を訴える要望書を同社側に提出。市が非公式に、あるプロスポーツチームのオーナー企業に練習施設としての活用を持ちかけたこともあった。

 今年の市議会3月定例会では、施設の存続や活用に関する質問が出た。清水聖義市長の答弁などによると、同社は売却価格を約5億円まで減額。水面下で市に購入を打診したものの、金額面での隔たりが大きく、交渉は停滞しているとみられる。

 ある関係者は「新型コロナウイルスの影響下で経営が厳しい中、売却価格が低過ぎると株主が納得しないだろう。三洋電機の“負の遺産”とも言える。会社側も扱いに苦慮しているのではないか」と推し量る。

 一方、清水市長は市議会の答弁などで、売却価格の引き下げが大前提だとしつつ、「良い施設なので放置するのはもったいない。適正価格であれば市の財産として引き継ぎたい」などと強調している。

 また、高校生世代のサッカー最高峰リーグ「高円宮杯U―18(18歳以下)プレミアリーグ」の試合が同市運動公園陸上競技場で行われることを踏まえ、遠征で訪れるチームに合宿所として提供し、スポーツを軸としたまちづくり事業に活用する考えも示している。