夏本番。暑い日が続くと、どうしても寝不足や食欲不振などから体調を崩しやすくなる。また、コロナウイルスへの感染予防も欠かせないが、心配ばかりしているとストレスから免疫力の低下を招いてしまう。本県が全国一の出荷量を誇るモロヘイヤは、栄養価がとても高く、免疫力のアップや夏バテ予防に効果が期待できる夏野菜だ。毎日の食卓にぜひ取り入れて、夏を乗り切ってほしい。

 県内の栽培面積の3割以上を占める太田市は、モロヘイヤが代表的な特産物となっている。JA太田市が管内の約60軒の栽培農家に苗を供給し、栽培に関する講習会を開いたり、巡回指導などを行ったりして、農家を後押ししている。

 栽培農家の1人、金谷さんも毎年、同JAから苗を購入し育てている。今年は3aの畑に約600本を植栽した。案内された畑には、30~40cmに育ったモロヘイヤが、青々とした葉を付けて3列の畝に見事な"グリーンベルト"を形成している。

 「モロヘイヤは6月から9月まで、長期間にわたって収穫できるのが特長です」と金谷さん。毎朝、妻のはるさん(82)とともに畑に出て、葉の付いた茎を切り取り、自宅の作業場で先端から25cmに長さをそろえて包装。同JAに出荷するのが日課となっている。

栄養価が高いモロヘイヤ

収穫期間が長い

 金谷さんが本格的に農業に携わるようになったのは60歳から。養蚕と米麦を中心とする農家の長男に生まれたが、会社勤めをしていたため、定年退職するまでは休日に少し手伝う程度だった。「農業人としての経験はまだまだ浅いです」と謙そんする。

 モロヘイヤを始めたのは15年ほど前。近所の人が栽培しているのを見て、「育て方などをいろいろ教えてもらいました」と振り返る。実際に手掛けてみて感じたのは、①他の作物に比べ栽培しやすい②収穫期間が長い③1本の苗から何度も収穫できる─など、たくさんの利点があることだった。

 「一度茎を切り取っても、成長が早いので4、5日すれば同じ苗からまた収穫できます」と金谷さんはうれしそうに話す。暑さや乾燥に比較的強いので管理もしやすい。「害虫に気を付けるほかは、天気の良い日に液肥を水に含ませてあげるくらいです」

花言葉は「体力回復」

 モロヘイヤはもともと養蚕の転作作物として普及したと言われ、農家にとって夏場の貴重な収入源になっている。金谷さん方では、ほかに赤ジソやシュンギク、冬場のホウレンソウなどを手掛け、JAに出荷している。

 黄色い小さな花を咲かせるモロヘイヤの花言葉は「体力回復」。青菜の中でも特に栄養価が高く、葉を刻んだ際に出るネバネバは花言葉のとおり体に良いとされている。

 調理の仕方は工夫次第でいろいろ。みそ汁の具やおひたしのほか、炒め物や揚げ物などに幅広く利用できる。「妻や娘は大好きで、毎日食べています」と金谷さん。80歳を過ぎてなお元気に農業にいそしむその姿は、あたかもアンチエイジングの象徴のようだ。

 お盆の頃がモロヘイヤの出荷のピークで、1日に160袋ほど出荷する。「妻と二人三脚で頑張ります」と笑顔を見せた。



 

元気な暮らしに役立つ/栄養のお話高崎健康福祉大学健康福祉部健康栄養学科講師 熊倉 慧
 

由来
 モロヘイヤは、別名シマツナソ、台湾ツナソ、トロロナと呼ばれるシナノキ科ツナソ属に属する一年生です。エジプトや中近東などを中心とした、暑い地域で食されています。モロヘイヤとはエジプト語で「王家の野菜」という意味です。日本には1970~1980年にかけて導入されました。群馬県内で栽培されるようになったのは、それまで盛んだった養蚕が衰退し、桑に代わる野菜として夏の暑さが適していたこと、収穫に使っていた農具が使えることから、定着したのではないかと言われています。群馬県のモロヘイヤ年間出荷量(2018年)は、334tで全国1位です。

成分

 モロヘイヤはビタミンやミネラル、食物繊維を多く含む栄養価の高い野菜です。

 私たちの体の中でビタミンAに転換されるβ-カロテンには、抗酸化作用などが期待されます。また、同じカロテノイドであるルテインが100g当たり十数mg含まれていることが報告されています。ルテインは主に目の中の黄斑部や水晶体に多く存在し、光のダメージから目を守る働きがあり天然のサングラスとも呼ばれています。体内でつくることができないので、食品から摂取しなければなりません。さらに脂溶性ビタミンの仲間としては、脂質の過酸化防止や生体膜の機能維持に関与するα-トコフェノールなども含まれています。水溶性ビタミンでは体内の物質の代謝に関与し、コラーゲンの生成に重要なビタミンCや、欠乏により皮膚炎などを生じるナイアシン、パントテン酸などが多く含まれます。ミネラルでは、細胞内の浸透圧維持を担っているカリウムや骨の主要構成要素であるカルシウムを多く含みます。そのほか骨の健康維持に重要な、リンやマグネシウムなども含まれています。

夏バテ予防

 モロヘイヤを刻んだ際に出てくるネバネバ成分は、腸内環境を良好に保ち、健康を支える働きがあると言われています。この成分はオクラや山芋などにも含まれています。疲労回復を促し免疫力を高め、夏バテ予防効果が期待できます。ネバネバが特徴のモロヘイヤは、エジプトでは各家庭に「マハラタ」と呼ばれる、モロヘイヤを刻む専用の包丁があるほど身近な野菜です。

 
豆知識/種子には注意を!
 モロヘイヤの種子には、強心配糖体であるステロイドのストロファンチジンが含まれことが知られており、大量に摂取すると毒性を引き起こします。野菜や加工食品として流通しているものは若葉を摘み取るので安全ですが、家庭菜園などで栽培する場合は黄色い花や種などを食べないように注意が必要です。
ふわり焼き
エネルギー205kcal/たんぱく質6.5g/脂質8.4g/塩分相当量1.0g
材料(1人分)
モロヘイヤ40g、山芋70g、キャベツ30g、ツナ30g、お好みソース小さじ2、紅ショウガ・削り節・青のり各適宜、ゴマ油小さじ2
作り方
①モロヘイヤはさっとゆで、1cm位に切る
②山芋をすりおろし、千切りキャベツ、ツナを混ぜ合わせる
③両面を焼き、お好みソースを塗り、削り節・青のりをふり、紅ショウガをのせる
冷や汁
エネルギー83kcal/たんぱく質6.9g/脂質3.8g/塩分相当量1.7g
材料(1人分)
モロヘイヤ30g、豆腐50g、ミョウガ半分、だし汁130cc、すりゴマ小さじ半分、みそ小さじ2
作り方
①モロヘイヤはゆでて細かく切る
②冷たいだし汁に、モロヘイヤとくずした豆腐を加える
③みそとすりゴマで味を調え、ミョウガを添える