「声優を続けたい。それが私が私であるための基盤」と話す田中さん

 日本アニメの実力を世界に知らしめたSF作品「攻殻機動隊」の主人公役などを務める声優、田中敦子さん(前橋市出身)が活動31年目に入り、上毛新聞の取材に応じた。「相手のハートを動かすせりふを投げたい」。一線を走り続ける先駆者の胸中には、静かにたぎらせる熱があった。

 1995年に公開された映画「GHOST IN THE SHELL(ゴースト・イン・ザ・シェル) 攻殻機動隊」以来、シリーズ主人公の草薙素子を演じる。インターネットやサイボーグ技術が発達した近未来で、犯罪を未然に防ぐ組織が舞台。日本アニメの金字塔で、続編や関連作品も多数ある。

 大学卒業後に一度は会社勤めをしたが、好きで続けられる仕事として声優の道へ。91年にデビューした。

 素子役を射止めた時の心境は「難しくて長いせりふが多く、うれしさと、背負った重さをひしひしと感じた」。演じ続け30年近く。「私を田中敦子という声優にしてくれたのが、彼女だと思っています」

 役柄から知的でクール、強い女性といった印象を持たれる。実際、これまで演じた8割は「捜査をする」内容で、弁護士や医者も多い。「声優は体の動きや表情で演じられない。微妙なニュアンスや息遣いで芝居していく」。大変な点であり、醍醐味(だいごみ)でもある。

 せりふは会話だと意識する。「相手のハートを動かすようなせりふを投げて、相手が返してくれて、自分の心が動く。ハートの動かし合いが一番楽しい」

 本県で生まれたのは、東京出身の父親が病気療養を機に定住したことがきっかけだった。「父が本当に愛した群馬県。誇りを持っている」。改めて人の優しさや美しい風景を思う。

 「ネットは広大だわ」。攻殻で素子が言い放ったアニメ史に残るせりふだ。映画公開から30年近くたち、スマホやSNSの普及をはじめ現実社会は様変わりしている。一方、これらに起因するさまざまな「分断」など課題や問題は多い。

 ツイッターで15万人のフォロワーを抱える田中さんは今、ネガティブなことはつぶやかないようにしている。「危険さを分かった上での便利さ。一人一人が、よくよく考えて使うことが大切だと思います」

 たなか・あつこ 前橋女子高ーフェリス女学院大卒。東京アナウンスアカデミー声優養成コース修了。「名探偵コナン」「呪術廻戦」への出演や、ニコール・キッドマン、ジェニファー・ロペスの吹き替えなど多くの作品に登場。攻殻機動隊の最新作が23日、ネットフリックスで公開される。

 田中さんの声や取材の詳細は13日、上毛新聞の公式ポッドキャスト「うまがまう」で、「#7 少佐が来た‼」と題して配信します。東日本大震災の復興支援や上毛新聞との縁、素顔が分かるエピソードも紹介します。