「二胡を通じて、一生に一度の経験を重ねていける教室にしたい」と話す秋山さん

 「コンサートに出かけるのは久しぶりだと思う。演奏が癒やしになれば」。高崎市の慈眼院で4月に開かれたコンサートで、二胡奏者の秋山さくらさん(33)=同市上並榎町=は来場者約50人に語りかけた。桜の花びらが風に舞う中、約10曲を披露。来場者は穏やかな表情で、歌うような音色に聴き入った。

 大学時代の主専攻はクラリネットで、二胡は副専攻。「喜怒哀楽が豊かに表現できる。感情が音としてまっすぐに伝わる」と、この中国の伝統的な弦楽器に引き込まれた。

 県内を中心に活動し、海外でのコンサートも経験。2019年にオリジナルの7曲と中国民謡「茉莉花(モーリーファ)」を収録したCDアルバム「Emerge」を発売した。

 同市内の楽器店でスタッフ兼二胡講師として働いた時、新型コロナウイルス感染拡大によって危機に見舞われた。コロナの影響で楽器店が閉店。最初の緊急事態宣言が明けた後の20年7月、楽器店の生徒を引き継いで自宅に教室「夢弦」を開いたものの、まん延防止等重点措置適用などに伴い、レッスンの中断と再開を繰り返した。

 コンサートも激減し、無収入に陥った時期もあった。「当たり前にできていたことが当たり前でなかったと痛感した」

 出産も控える中で仕事がなくなり、不安が膨らんだ。だが、母親になる覚悟が固まると、「仕事も育児も頑張ろう」と決意。臨月までコンサートをこなし、同年12月に長女を出産した。

 演奏者として生きることを決めたからには、空いた時間を練習や制作活動に充てた。ミュージックビデオの制作や楽曲の配信、ラジオ出演まで挑戦した。「コロナに負けるものか」という思いが原動力になった。

 演奏できる環境は徐々に戻ってきたと感じている。演奏会では、心が落ち着く曲やメッセージ性のある曲を選ぶよう心がけ、「この時間だけはコロナを忘れてもらうつもり」で奏でる。

 「癒やされた」という反響や感想に、音楽の力を感じるという。コロナ禍や出産を経て新たに生まれたメロディーもあり、「経験を音楽で表現したい」と思い描く。

 教室名「夢弦」は「夢の詰まった教室」に「無限の可能性」への願いを込めた。現在は自身の教室と日中友好協会前橋支部の教室を合わせ、10代から80代までの計約40人に教える。生徒を巻き込んで演奏の場をつくったり、自身の演奏の機会を増やしたりして二胡の魅力を広めるつもりだ。