香港人の友人が先月、家族で日本に移住してきた。政府への批判的な言動に対して圧力が強まっている香港では出国の動きが加速し、多くの市民が英国やカナダ、そして日本に移住し始めている。そこで彼は子どもの教育のことを考え、日本行きを決断したそうだ。

 彼とは10年以上前にオーストラリアで出会った。一緒に旅をしたり、同じ職場で働いたりするうちに親友となり、彼の結婚式に参列するため香港に行ったこともある。そんな彼が日本移住を決めたことはうれしかったのだが、半面心配なことがあった。それは彼の家族の誰も日本語を話せないことだ。

 彼らは入国してからホテルに拠点を置き、まず生活の基盤を整えようとした。しかし、電話番号を取得しようとしても決まった住所がないため契約できず、金融機関で口座を作ろうとしても郵便局や銀行には英語を話せるスタッフがいなくて、うまく対応してもらえず、さらに不動産会社で家を借りようとしても外国人という理由だけで断られてしまったという。何もかも順調にいかず、私がサポートをしに会いに行くまでに、彼は疲弊しきっていた。

 それ以上にかわいそうだったのが、彼の5歳になる子どもだ。幼稚園に通えず、ずっとホテルに引きこもってばかりでストレスがたまったのか、体中に湿疹ができていた。

 私は彼の通訳としてさまざまな申請作業を手伝いながら、外国人が日本に住むということはこれほどまでに大変なのかと思い知らされた。特に不動産に関しては、言語の問題以前に、外国人というだけで何十件と断られてしまう彼がふびんで仕方がなかった。外国人というくくりに縛り付けられ、彼という個人は全く見てもらえていなかったのだ。

 日本は既に移民社会である。コンビニエンスストアの店員やフードデリバリーの配達員が外国人であることは珍しくなくなった。そんな彼らは、今後人口減少が一層加速していく日本で何よりも大切な人材であるはずだ。そしてロシアによるウクライナ侵攻を受けて、日本はウクライナからの避難民の受け入れも始めている。

 将来、世界がどのように変わっていくかは誰にも分からない。唯一分かっていることは、同じ地球に住む私たちは皆で協力し合い、いろいろな危機を乗り越えていかなければならないということだ。

 それは難民問題にしても、環境問題にしても、ジェンダー問題にしても同じことだ。そのような問題は時代とともにどんどん複雑に変化していく。だから私たち人間も変わっていかなければならない。

 外国人というレッテルを剝がし、一人の人間として認め、もう少し彼らが住みやすい日本へと変わっていくことを期待したい。

 【略歴】大学卒業後に世界を飛び回る中で、通り掛かりの人と抱擁する「フリーハグ」を開始。約1万人とつながってきた。企業や教育機関で講演も行っている。

2022/5/16掲載